怪物の巣窟。ドゥカティ本社工場潜入レポート
- 掲載日/2010年12月24日【特集記事&最新情報】
- 取材協力/DUCATI MOTOR S.p.A 文・写真/海野亮治
2008年春から生産をスタートしたニューモンスターは、世界中からのバックオーダーを抱えて、工場はまさにフル稼働状態。訪問したのが夏休み直前だったこともあって、日本でいう年末の帰省シーズン前の慌しさのようだった。
このとき、デスモセディチRRを含めて全部で4本の組立ラインを擁し、16台/時、130台/日程度の生産能力をもっていた。とくに増産シフトをしいて年間5万台ペースでLツインを生み出しているが、全体での工員数は1000人程度だ。意外に少ないように思えるが、トレーニングを受け経験を重ねた少数精鋭による工場といっていいだろう。
【01】エンジンからはじまるアセンブル
ボローニャ西部ボルゴ・パニガーレにあるドゥカティ本社工場の組立ラインは、2008年時点では4本。それ以外にエンジン組立ラインや金属加工工場などがある。訪問時は組立ライン1本をモンスター696がまるまる占有するフル稼働状態。組立ラインは、エンジンラインから上がってきたエンジンを台座に固定することからはじまる。
【02】スイングアームの装着
ドゥカティのマシンの構造は、スイングアームピボットをフレームではなくクランクケースに置くのが特徴だ。モンスターのラインではまずエンジンにエキパイを装着、次にスイングアームを締結している。これはエキゾーストパイプが等長であることが起因している。スイングアームピボット内側で大きく屈曲するエキパイを取り付けるには、このほうが効率的なのだ。
【03】いよいよフレームの組み付け
モンスターの特徴であるデスモセディチ譲りのコンポジット(前後2分割)フレームは、この工程で両方とも同時に組み付けられる。車両の顔ともいうべきトレリスフレームには保護カバーが付けられ、これは出荷状態になるまでそのままだ。また、電装ハーネスなどもあらかじめフレームに結束されている。これも作業効率を高める独自の方法だ。
【04】フロントフォークとステアリングヘッド
次にフロントフォークを組み付ける。ここまでくると一気にバイクの形らしくなってくる。ハンドルバーやステム、フロントフォークとスイッチ類、ハーネスおよびワイヤーなど、フロント側一式があらかじめセットされている。同時に前後のフレームに結束されていたハーネス類を接合、ケーブル類も所定の位置へと取り回される。
【05】インジケーターで規定トルクに締結
フロントフォーク/ステアリングピボットをステム部分に締め込み、同時にリアサスペンションを取り付ける。これらの作業は、前段階のエンジン/フレームの組み付けと同様だ。トルク管理をしっかりと行うためにインジケーターにつながったトルクレンチを使い、規定の順番に進めている。この方法はデスモセディチのエンジン組立と同じやり方だ。
【06】エンジン補器類とクリーナー/タンク装着
ラインには1台の車両に必ず1台のワゴンがついて回っていて、その中に補器類など様々な部品が組み付け順に置かれている。こうしてあらかじめセットしておくことで、効率を高めているのだ。この工程ではキーやオーナーズカードも車両にクリップされ、世界各国での納車まで共に移動する。
【07】マフラーや前輪を装着、台座から下ろす
マフラーを装着、フロントタイヤを組み付ければ車両を転がして運べるようになる。ここで一旦ウィンチで吊り上げて台座から切り離し、晴れて初めて大地を踏むことになる。このセクションは一際屈強なスタッフが担当しているように見えたのは気のせいか。この先にあるダイナモ室で走行状態のチェックを行う。
【08】光軸調整、各部のチェックと補正作業
前工程のダイナモチェックで、ブレーキやエンジンパワーに問題が見つかった場合は、隣接した作業ピット内で1台ずつ丁寧に補正作業が行われる。もちろん、ここにやってくる車両はごく一部にすぎない。駆け足での紹介だったが、こうして車両アセンブルが終了し、完成車両となる。組立ラインは効率化されているため簡単に見えるが、それぞれのパーツの生産や加工の工程もあるから、実際にはもっと多くの時間と手間をかけて生産されているのである。(2008年7月下旬取材)