モンスター696などが純正採用しているAPTCとは何ですか?
- 掲載日/2009年01月08日【ドゥカティQ&A】
純正クラッチを供給している
アドラー社製のスリッパークラッチのことです。
定番パーツとなった
スリッパークラッチ
シフトダウン時のバックトルクを解消し、スムーズなエンジンブレーキを生み出すスリッパークラッチが注目され始めたのはここ数年の話。もともとはレース用のパーツとして開発されたものですが、モトGPやスーパーバイク、モトクロス、スーパーモタードなどでその優位性が実証されると、ストリートのライダーたちの間でも瞬く間に一般化しました。特に日本では、コーナーリングスピードを重視するスーパーモタードの世界から火がついたと言われており、現在ではヨーロッパのパーツメーカーの製品をはじめとして、さまざまなスリッパークラッチが販売されています。
近年、ドゥカティに純正採用されスペック表にもたびたび登場するようになったAPTCは、正式名称を「アドラー・パワー・トルク・クラッチ」といい、数ある製品の中でもイタリアのアドラー社製スリッパークラッチのことを指します。アドラー社は、ドゥカティにクラッチなどのパーツを供給している総合部品メーカーで、純正パーツを製造していることからも、高品質な製品を生み出す企業であることがうかがえます。
レース用のパーツとして開発されたスリッパークラッチ。当然モトGPマシンにも採用されています。
単なるスリッパークラッチではない
APTCのヒミツ
純正部品メーカーとしての実績があるアドラー社ですが、数ある製品のなかから、APTCがドゥカティに純正採用された理由はそれだけではないようです。APTCは作動がスムーズで、シフトダウン時のエンジンブレーキがもたらすバックトルクをクラッチが適度に滑ることで抑制。リアタイヤのホッピングや瞬間的なロックを防止し、安定した減速とコーナー進入を約束してくれます。これに加えて、クラッチレバーは握り始めからの重さが驚くほど軽減され、手の小さなライダーや女性にとって大きなメリットとなります。しかし、これだけであれば、他社の製品と比較して大きなアドバンテージがあるとは言えません。APTCはこうした高い性能とともに、耐久性・信頼性が高いというメリットを兼ね備えているのです。密閉型のユニットは外部のホコリや飛散したグリスなどをシャットアウトし、ボールベアリングを使用しない特殊なジョイントや、クラッチ板を均一に密着させる大小4本のスプリングなどからなるシンプルな構造が、高い信頼性と耐久性を実現しているのです。
スプリングを支持する4本のボルトが特長的なAPTC。現行ノーマルクラッチには6本のボルトがあります。
純正採用されたことが証明する
APTCの信頼性
一般的に純正パーツというものは、さまざまなユーザー、さまざまな使用条件を考慮して採用が決定されます。操作性はもちろんのこと、品質や機能性、耐久性、信頼性など、あらゆる条件がテストされ採用に至るのです。ドゥカティがスリッパークラッチのような、いわば特殊な部品を敢えて純正採用したということは、そうしたさまざまな条件をクリアしたという証でもあるのです。レース用に開発されたすばらしい性能のパーツでも、それをそのまま公道用モデルに採用したのでは、メンテナンスの頻度も高くなりユーザーの金銭的な負担も増えてしまうでしょう。そのため、こうしたパーツが大量生産されるモデルに純正採用されることはまずありません。APTCは、すばらしい性能を発揮しながらも、過酷なストリートユースにも耐えうる高い耐久性を備えていたからこそ、ドゥカティが純正採用に踏み切ったと考えられます。
モンスター696のクラッチ部分。APTCは密閉型のため外観からその存在を確認するのは困難です。
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