ドゥカティ ライディング エクスペリエンス エンデューロ レポート
- 掲載日/2016年09月05日【トピックス】
- 取材協力・写真/Ducati Japan 取材・文/松井 勉
このDREエンデューロ、680ユーロの受講料には、ムルティストラーダ1200エンデューロのレンタル、2日分のランチと初日のディナー、講習中のメディカルアシスタンス、会場となる古城のガイドツアーなどが含まれる。そして古城を出ると、このような風景が広がり、こうした場所でトレーニングは行われるのです。2016年は9月2~3日、3~4日、そして9月16~17日、17~18日の4回が予定されている。
世界イチ素敵なオフロードトレーニング
それは2日間の魅惑体験だった
モータースポーツでの活躍、機能美を越えた美しいデザイン、先端の技術。ドゥカティが送り出すプロダクトが魅了するのは、見ても乗っても深い世界が楽しめるからでしょう。その世界をもっとユーザーと共有したい。そんな思いからドゥカティはライダー向けのトレーニングプログラムを開催しています。ドゥカティ・ライディング・エクスペリエンス(DRE)がそれで、公道走行向け初級クラスから、ワールドチャンピオンを講師に招いてサーキットで行われるアカデミーまで全6コースが用意されています。2016年、ムルティストラーダ1200エンデューロを発売したドゥカティは、既存の6コースに加え、オフロード走行を会得するDREエンデューロを新たに開講。幾度もダカールラリーを完走した強者ライダーを含む講師陣が、ビッグバイクで楽しむオフロード走行の基本をしっかりと教えてくれるのです。イタリア、フィレンツェから30分程の距離にある美しい丘陵地帯に立つ古城をベースに行われたDREエンデューロを体験入校したレポートです。
フォトTOPICS(写真点数/19枚)
01カステロ ニポッツァーノ。大戦時の砲撃で一部が壊れたものの、1000年を越える年月、この丘を見続けた古城です。ワイナリーとしてもお馴染みで、海外の要人が訪ねて来たときの写真が多く飾られていた。そんな場所が会場なのです。ランチ、ディナーは古城の広間で摂りました。
02各色揃ったムルティストラーダ1200エンデューロ。本各的なオフロード走破性を持ったバイクだけに、その性能を安全に楽しく使いこなすために用意されたのがDREエンデューロだ。2017年以降、ここニポッツァーノだけではなく、近隣諸国でも開催を模索しているという。日本から海外旅行としてこのスクールに参加するだけでも魅力的な場所。これがドゥカティのクオリティーの高さだ。
03最初のプログラムは座学。チーフインストラクターのベッペ・グアリーニ先生によるオフロードを走る基本が伝えられる。生徒が座っているのはバランスボールで、走る前からじんわり汗ばみます。古城の一室が教室になるのだが、ハンドルの持ち方、スタンディングの仕方、バランスの取り方、登坂路、降り坂等々、各項目別の解説に聞き入ります。
04グアリーニ先生は、アフリカのラリーに63回出場し、60回完走した、という強者。市販車無改造のマラソンクラスでは度々優勝した、と。壊さず確実にアフリカを走り続けた技が惜しみなく伝えられて行きます。杖かと思ったものはハンドルバーでした。こんな所にも遊び心と冒険心をくすぐるのです。
05座学後、着替えを済ませた受講生は古城の車寄せに停められたバイクの前へ。まずはフィットネスのトレーナー氏によるストレッチングが行われます。怪我をせず、体が動くよう、首、肩、腰、足など可動部を一つ一つ動かし、伸ばしてゆきます。走行開始前、走行後にも同様のストレッチが行われました。
06DREエンデューロは生徒18名程度を上限に行われるとのことです。グループ分けしたとき、インストラクターが先導、後追いにつけるような布陣をとり、6名に2名が着くようなイメージだとのこと。古城からブドウ畑の中の道に移動して座学でのポジションを確認。パイロンスラロームの練習から始まりました。
07スクールバイクであるムルティストラーダ1200エンデューロは、ロースクリーンを装備し体重移動時など思い切った動きをライダーは試せる仕様に。オプションのクラッシュバーも装備し、転ぶことへのタフネスもアップ。タイヤは標準のピレリ・スコーピオントレールⅡから、同じくピレリのスコーピオン・ラリーに交換されオフロードでのグリップも向上。
08ベースとなる古城を出発する。行動は基本的に集団での移動。先導と後追いのインストラクターがグループ分けをしてしっかりサポートしてくれる。移動スピードもレベルに合わせたきめ細やかなもの。古城周辺だけでもツーリング心が相当にくすぐられます。
09初開催となった7月下旬のDREエンデューロ。その一回目はジャーナリスト向けの体験取材とされました。日本からは私(右)と河野正士さん(左)が参加。基本的な事を反復練習できたこと、長い経験を持った今こそ、今一度習って良かったと思う内容でした。
10牧草地をコースにしたトレーニング会場。ダートコースといえばホコリが酷い、という印象がありますが、ここはそうではありませんでした。斜面の中に描かれたカーブは曲がっている間に登りと下りが入れ替わる場所が多く、スピードを出せば出すほど難しさが顔をだします。それでいてビギナーでも難なく走れる設定の絶妙なもの。
11インストラクター達はこのコースを7日間ほどで完成させた、と話していました。草の高さはもっと低く刈り込まれ、完成したのがコース全体の写真です。芝生の上のようで気持ちが良く照り返しもやわらか。景色も雄大、世界一素敵な講習会場ではないでしょうか?
12短い間隔に置かれたパイロンでのスラローム。曲がる方向と逆側のステップに体重を移動し、バイクが倒れ込むのを防ぐ練習。バイクが重く感じるのは体重移動がたりないから、とインストラクターは明快なアドバイスをくれます。
13慣れてくるとジャリ道の上でもこれぐらいバイクを寝かして曲がれるようになります。バランスが取れて前輪がしっかり曲がる方向を向いてるのがポイント。ハンドルを抑えてしまうと曲がれず滑ります。ライディングポジションはスタンディング。オフロードでは座ることを忘れなさい、とはグアリーニ先生の明言。ムルティストラーダ1200エンデューロもそうしたポジションに合わせたハンドルバーの高さだったりすることに気が付きます。
14丸太で造った波状路。腰を引き、前輪に掛かっているライダーの体重を後輪側に移し、アクセルを少し開けて前輪の荷重を抜く、書くと難しいですが、やると意外に簡単です。フロントサスペンションがギャップを見事に吸収する感触が解ります。
15いいですか、一本橋から落ちたら、もう一度戻ろうとしないように。僅かな高さですが、前輪が滑って危険です、とは先生のアドバイス。教習所の一本橋より確実に狭くタイヤの幅程度。完走するには先を見なさい、は教習所と同じなのですが……。左右のステップに掛かる体重でバランスを取りなさい、がアドバイス。
16前から一度やってみたかったシーソー。ポイントはゆっくり、しかし確実に中央部分まで上がり、シーソーがゆっくり反対側に降りるよう速度をコントロール。コツを掴むとドカンと落ちません。ただ、視点が高くなるので、最初はちょっと恐かったですが。
17後輪に体重を掛けるイメージで。アクセルは開けすぎず、締めすぎず。急斜面のヒルクライムは緊張します。滑る路面を理解しやすいように装備されているトラクションコントロールは設定でキャンセルされています。また、エンデューロモードを選択しているので、後輪のABSもカットされている状態でDREエンデューロは行われました。
18急斜面を下るダウンヒル。体が前のめりにならないよう腰を引き備えます。後輪のブレーキをしっかり使い、前輪のブレーキも補助で使う。慣れてきて出来る人は斜面をゆっくり下る、あるいは停まったり、というトライも織り交ぜながらコントロールする楽しさを体験。
19全員揃ってダイニングでランチ。古城の天井からは豪奢な照明が。ディナーはコースでサーブされ、ランチはとなりの部屋に置かれた皿から好きなものをチョイス。トスカーナ風の料理だという。美味しいイタリアンでした。