VIRGIN DUCATI | ドゥカティ ハイパーモタード796 試乗インプレッション

ハイパーモタード796の画像
DUCATI Hypermotard 796

ドゥカティ ハイパーモタード796

  • 掲載日/2012年03月06日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・文・写真/和歌山 利宏

ミドルレンジ・ドゥカティが面白い

自然体のライディングポジションで日常的に楽しめる
アグレッシブなキャラのミドルモタード

そもそも、モタードモデルのオフロードスタイルのライディングポジションというのは、マシンコントロール性が高いスタイルである。マシンをアグレッシブに操ることができて、体重移動の自由度も高いからだ。また、モタードマシンそのものも、オフロードバイクがベースで、積極的な走りに応えてくれるものとしている。普通のロードスポーツがベースでは、せっかくのライディングポジションを活かせる運動性能も期待できないわけで、実際そんなモデルは存在しない。だが、Lツインのドゥカティはそれを可能にしてしまったのだ。ハイパーモタードは、モタードスタイルのライディングポジションで乗るドゥカティなのである。

サスペンションストロークが、一般的なロードスポーツの前後120mmに対して、ハイパーモタードのそれはフロント165mm、リア141mmと大きいのも、積極的に姿勢変化させて運動性能を引き出すためだと考えていい。もっとも、荒れた路面や歩道など段差の走破性に優れ、気合いを入れてマシンコントロールを楽しむには良くても、漠然と乗っていては、こうした設定は必ずしも具合が良いことばかりではない。うまく乗れば大きい姿勢変化を活かせても、リズムに乗れないと挙動を乱すだけだからだ。それに、サスペンションストロークが大きいと車高が高く、足着き性も犠牲になる。また、燃料タンク容量は、12.7リットルと小さい。体重移動の自由度を追及した結果でもあるが、これはハイパーモタードのキャラクターを物語っていると言っていい。ツーリングで使うよりも、短い距離を集中して楽しむのが身上なのだ。

振り返ると、2005年のミラノショーでコンセプトモデルとして出展されたハイパーモタードは、まず1100が2007年春に2008年型として市販開始。ショーデビューが参考出品で、市販までいくらか期間が置かれたのは、ドゥカティにとって新しいカテゴリーに対しての慎重な取り組みもあったのだろうか。ただ、既存のドゥカティにとって特異な存在でもあっても、そのハートはドゥカティそのものである。

そして1100から2年あまり遅れて登場したのが、この796である。スポーツの部分にフォーカスした1100とは違い、796には実用に供することのできる持ち味がある。

ハイパーモタード796の画像

まず嬉しいのは、シートの着座位置近辺がえぐられるように低くなっていて、1100と比べてシート高が20mm低い825mmとなっていることである。おまけに前後サスペンションは日常域で適度に動いてくれ、跨ったときの沈み込み量も大きいのか、足着き性はかなり改善されている。また、相対的にハンドル位置が高く、アグレッシブに身構えていたライディングポジションは、一般的なオフロードモデルに近い自然体となっている。

そのうえ程よい排気量によってトルク感もまさに中庸。同じエンジンを搭載するモンスター796よりも、スロットルレスポンスは悪く言えば緩慢であっても、ハイパーモタード796では大きい姿勢変化とうまくシンクロしてくれるのでマッチングも上々だ。フロントブレーキも効きがまろやかだから、しなやかに動くサスペンションとの相性も良く、姿勢変化をコントロールしやすい。違和感なく、大きく姿勢変化させてのライディングができる。

つまり、ハイパーモタード796は、モタードの運動性能を日常使用の中で活かすことができるバイクなのだ。一般的なロードバイクとしては決して足着き性は良くないが、日本人の平均的な体格なら問題ないだろう。それにハンドル切れ角が大きいから、街乗りバイクとして使うにも好都合だ。サスペンションストロークの大きさや、上体の起きたライディングポジションは楽で前方視界も良い。それに、遠くへ足を伸ばすつもりもないなら、小さい燃料タンク容量も問題にはならない。そして何より、ただ街乗りに使えるだけではなく、普段の移動をもアグレッシブに楽しめるのである。

ハイパーモタード796の詳細写真

ハイパーモタード796の画像
上級モデルとなる1100EVOとの識別点は少ない。しかしながら796ではシート高とサスセットが見直されており、ライダーはまたがった瞬間に、2台の違いに気付かされることになる。
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上級モデルとなる1100EVOとの識別点は少ない。しかしながら796ではシート高とサスセットが見直されており、ライダーはまたがった瞬間に、2台の違いに気付かされることになる。
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フロントはφ43mmマルゾッキ製倒立フォークをセット。ブレーキはブレンボ製4ポッドラジアルマウントキャリパーと、305mmセミフローティングディスクの組み合わせ。
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ホイールはモンスター796と同じ5本スポークのデザイン。ブレーキは245mmブレンボ製シングルディスクと、2ポッドキャリパーの組み合わせ。フットレストは796がマットブラック、1100EVOがシルバーとなる。
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モンスター796と同じデスモドゥエエンジン。マフラーの取り回しや、エンジンマネージメントの見直しの結果、出力、トルクともに低められ、扱いやすさを高めた。
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マフラーレイアウトは2-1-2。1mm厚チューブの採用で軽量かつコンパクトなデザインを実現しているという。マフラー出口とシートカウル間の狭いスペースにLEDテールレンズが組み込まれている。
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エンジン回転数をバーコード表示するマルチファンクションメーター。さまざまな警告灯はメーター上にまとめられている。オプションのDDAを起動する、コントロールパネルとしても機能する。
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ハイパモタードのスタイリングを特徴づけるハンドルカバーの先端に装着されたミラー。全体のデザインをすっきり見せることには効果が高いが、都内などすり抜けでは気を使うことになる。
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片持ち式リアサスペンションのショックは、モンスター696/796と同じザックス製ユニットを使う。1100と異なるサスセッティングは、前後ともにソフトな方向に。それによって796は足付き性を向上させている。

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