ドゥカティ モンスター796
- 掲載日/2012年02月28日【試乗インプレッション】
- 取材協力/Ducati Japan 取材・文・写真/和歌山 利宏
ミドルレンジ・ドゥカティが面白い
末弟のモンスター696を越えたい
そんな拘りを持つ人のモンスター
空冷2バルブユニットを搭載する現行のモンスターファミリー第1号車は、2008年デビューのモンスター696で、モンスター1100は2009年型として、2008年秋に登場した。このモンスター796の登場は2010年春で、ファミリー中、最も後発となる。これら3台は車体の基本を共用する兄弟機種なのだが、特に796と696は、一卵性双生児と言っていいほど共通点が多い。エンジンの基本も共通で、ストロークアップによって排気量を 695cc から 802cc に拡大しているのだ。
この排気量差は、街中や条件の悪いワインディングならさほど感じることはないだろう。それに、両車を乗り換えても全く違和感が無いばかりか、「本当は両車が同じバイクで、印象の違いは個体差に過ぎないのでは?」と思ったほどである。それほどに両車から受けるフィーリングは、かなり近いと言っていい。
ところが、造り込みの狙いと味付けの違いは、見事なほどに絶妙である。当然 100cc 余りの排気量差は、条件の良い自動車道路やワインディングで感じられる。わずかとは言え「モア・パワーを」という願望を満たしており、スポーティさが上乗せされている。そしてその上乗せされた動力性能によるスポーティさをサポートし、マッチングを図るべく、随所が改められているわけだ。
そのため、モンスター796では車高が高められている。しかもリア側のほうが高くなっていて、車両姿勢はやや後上がりである。これが豊かな荷重移動とピッチングを生み、コーナリング性能を高めているのだ。しかもタイヤは幾分ハイグリップ指向のものが採用され、高められた車高が180にワイド化されたリアタイヤとマッチング、積極的な荷重コントロールでのライディングに仕向けられる。そのため、ワインディングで一層スポーティに走りを楽しむことができる。
もちろん多くの人にとって、街乗りでは696に軍配が上がるかもしれない。696のほうが車高の違いでシート高が 30mm 低く(この数値差ほど足着き性の違いは大きくないが)、取り回しが楽なのだ。加えて低重心化による安定感にも勝り、前後の荷重移動やピッチングにシビアさはなく、全てがイージー指向に振られている。
エンジンの回り方も、696が「ドコドコ」と軽快だとしたら、こちらの796は「ドコーッドコーッ」と、粘りと加減速の抑揚が強められている。スロットルワークによってピッチングを作り出しやすく、よりスポーティに扱う可能性が広がっているのだ。
両車の前後サスペンションを停止時に手で押してみると、696と796はセッティングの違いが分からないほど、よく似ている。だから乗っても、どちらが街乗り用でどちらがワインディング用なんて違いが歴然としているわけじゃない。しかし、車高やタイヤサイズ、エンジンフィーリング、全てのマッチング形として、絶妙なキャラの違いが生み出されているのである。
そればかりか、同じように見えた車体に注目すると、796のスイングアームはモンスター1100と同じ片持ち式で、特に右後部のフォルムがスタイリッシュに見える。ダブルシート後部にはボディ同色のシートカバーも装着されている。
僕自身、696で十分だと思うし、小柄なビギナーの女性にはそれを薦めるだろうけど、どうせならより楽しめる可能性のある、モンスター796を選ぼうという気にもなる。価格差も含め、両車の位置付けの絶妙さは、ユーザーをこの上なく悩ませることになりそうだ。
モンスター796の詳細写真
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