VIRGIN DUCATI | ドゥカティ モンスター1100S 試乗インプレッション

モンスター1100Sの画像
DUCATI Monster 1100 S

ドゥカティ モンスター1100S

  • 掲載日/2009年06月18日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  構成/VIRGIN DUCATI.com 編集部

伝統のLツインと革新のフォルムが融合
生まれ変わった新しいモンスター

ドゥカティのラインナップにおいて、最もスタンダードで人気のあるシリーズが“モンスター”。初代モデルが発表された1993年当時はデザイン性に優れたネイキッドマシンが一般的でなく、エポックメイキング的なモデルとして世界中に驚きをもたらしたことを覚えているライダーも多いだろう。その後何度かのモデルチェンジを繰り返してきたが、根本となるスタイルは不変のまま進化を続けてきた。そのモンスターが、2008年ついにフルモデルチェンジを敢行。MotoGPマシンであるデスモセディチからの技術フィードバックを取り込みつつ、これまでのイメージを上手く残しながらスタイルを一新し、伝統と革新が融合したモンスター1100S(以下モンスター)として生まれ変わった。ドゥカティの中核を担うこの怪物がどのような実力を秘めているのか、試乗を通してじっくりとチェックしてみたい。

モンスター1100Sの特徴

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圧倒的な軽さと美しいスタイリングを持つ
新世代のネイキッド・スポーツ

雰囲気こそ似通っているものの、このモンスターは先代モデルと比べると、各部が大幅に変更されている。その中でも特に注目したいのがフレームだ。ドゥカティのレース部門の協力によりデスモセディチRRの技術を導入し、ショートフレームコンセプトのもとフレームを新設計。スーパーバイク1098Rと同径同肉厚のチューブを採用し、軽量化と高剛性を両立している。また、フレームだけでなくスイングアームも新しくなっており、ホイールベースも10mm拡大。これに組み合わされるサスペンションは前後オーリンズのフルアジャスタブルタイプで、ブレーキはスーパーバイク848などでも使われている、ブレンボのラジアルマウントキャリパーをダブルで装備。エンジンについては、ドゥカティの伝統とも言える空冷2バルブデスモドロミックだが、こちらも以前のままではない。エンジン総重量の軽量化を図るため、高真空ダイカスト製法で作る完全新設計のクランクケースを採用。これまでのエンジンに比べ、3kgの軽量化を実現している。以前の面影こそあるものの、全く新設計のバイクと言っても過言ではないだろう。

そして何より注目したいのは、モンスターならではのスタイリッシュなデザインだ。無骨なマシンが多勢を占めていたネイキッドカテゴリに革命をもたらしたモデルだけに、今回のスタイルもイタリアンデザインならではの美しさに満ちている。エアインレットとハンドルの逃げをタンクデザインに取り込んだ点など、ドゥカティならではの機能美と言えるだろう。シートからテールへと流れるラインや、無駄を排したハンドルまわりなど、独自の美学に基づくスタイリングは、ルックスとオリジナリティを兼ね備える仕上がりだ。それでいて、今まで築き上げてきたモンスターシリーズの後継であることを意識させるエクステリアは、見事という他はない。今購入できる他メーカーのネイキッドバイクと比較しても、モンスターは一際魅力的なモデルだ。

モンスター1100Sの試乗インプレッション

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懐の広さと扱いやすさが
乗り手の心に火を点ける

モンスターは、走り出す前と走り出した後で大きく印象の変わるバイクだ。ネイキッドバイクとしては低いハンドル位置と高めのシート高で、「ネイキッドなのにスポーティ過ぎないか」と、予想以上の戦闘的ポジションに一瞬戸惑ってしまい、思わず身構えてしまうほどだった。しかし、この警戒心はいい意味で裏切られることになった。エンジンに火を入れ、空冷Lツインの迫力ある排気音と鼓動を感じながら走り出すと、意外なほどフレンドリーな表情が見えてくる。熟成された空冷2バルブデスモドロミックエンジンは、2000回転でも走れるほどトルクフル。かといって高回転が鈍いわけではなく、アクセル開度に応じて軽やかに吹け上がっていく。

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また、トルクの盛り上がりが比較的穏やかなため、恐れることなくLツインのパワーを操ることができるのだ。走りはじめは低くて過激だと思っていたポジションも、乗れば乗るほど“自然にフロント荷重がかかる”ポジションであることが分かってくる。そして、このポジションから見る視界の広さも他のネイキッドにない魅力的なポイント。メーターとミラーが最低限だけ視界に入り、それ以外は何も遮蔽物を感じないため、交通状況における自分の位置がとても分かりやすい。高いドライバビリティに広い視界が加わった乗りやすさは、これまでのネイキッドにはない感覚だ。

とはいえ、それだけでモンスターは終わらない。気軽に流して走ることを止め、意識をスポーツモードへシフトさせれば、その名の通り怪物の顔が垣間見える。扱いやすさはそのままに、スピードレンジは一気に公道で許されるレベルを超えていく。しかし、そんな状況になってもモンスターはどこか悠然としたところがあり、無用な不安を感じさせない。何より面白いのが、スロットルを開けるほど「まだまだ行けるぞ」とモンスターが乗り手を掻き立ててくるところだ。街中で見せた扱いやすさはそのままワインディングでの自由度となり、余裕が生まれるため自分の限界がどこにあるのか突き詰めたくなってくる。降りた後、すぐにもう一度乗って走りたくなるバイクは少ない。それほど、モンスターはライダーの心を掻き立てるエキサイティングな1台だ。日常では気軽に楽しめる寛容さと非日常を楽しませるスポーツ性能。その両方を備えたモンスターは、まさに新世代の「怪物」だった。

プロフェッショナル・コメント

乗り手の経験を選ばない
奥深いスポーツ性が魅力

「モンスター1100Sは、もしかすると現行ラインナップの中で一番乗りやすいモデルかもしれませんね。トルクが非常にぶ厚いため、想像以上に気軽なライディングが楽しめてしまうんです。街中の低速走行などはエンジンを回さなくて良い分、696よりも扱いやすいところがあると思いますよ。ドゥカティなので、回せばもちろん速いのですが、そうでない領域も楽しめるのがモンスター1100Sの魅力。免許取り立ての初心者から峠に通うベテランまで、多くのユーザーを受け入れる懐の広さを持っています。一瞬コワモテに見えるかも知れませんが、乗ってみると本当に付き合いやすい“フレンドリー”なモンスターですよ(笑)。また、セッティング次第で乗り味を大きく変えることができるので、一粒で何度も美味しいバイクとしてもおすすめ。長く乗れる1台だと思いますね」(DUCATI MATSUDO セールススタッフ 遠藤 直樹さん)

モンスター1100Sの詳細写真

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熟成された伝統の空冷2バルブデスモドロミックエンジン。豊かなトルクを持っており、扱いやすい仕上がりだ。
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先代モンスターから、フェイスデザインは大きく変更された。ヘッドライト上部のカウルは見た名以上に整流効果を感じる。
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メーターはすべてがデジタル表示。昼夜ともに視認性は高い。操作は左手グリップ側についている専用のスイッチで行う。
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フロントサスペンションはオーリンズ製。ブレーキはスーパーバイク848などと同じラジアルマウントキャリパーを採用。
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リア側にもオーリンズ製サスペンションを装備。標準の状態で街乗りを前提としており、初期の動きもスムーズだ。
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タンク前部にはエアインレットを兼ねるタンクの逃げ加工がある。それを感じさせないデザイン性は秀逸。
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今まで丸型のスタンダードなミラーだったが、モンスター696からスーパーバイクをイメージさせるものとなっている。
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シングルシートカバーを外せばタンデムすることも可能。ただ、座面の広さを考えると一人乗りで楽しむほうがおすすめだ。
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身長174cmのモデルの場合、停車時に片足がしっかりと着く。ただ、696に比べるとシート高は4cmほど高い。

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