VIRGIN DUCATI | ドゥカティ モンスターS2R1000 試乗インプレッション

モンスターS2R1000の画像
DUCATI Monster S2R1000

ドゥカティ モンスターS2R1000

  • 掲載日/2008年10月24日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・文・写真/八百山 ゆーすけ

発売当時はドゥカティの異端児
今やスタンダードなモデル

日本において、ハーレー、BMWに次いで、輸入車の代表格ともいえるのが、イタリアのドゥカティ。昨年のmotoGPでイタリアのメーカーとしては34年ぶりにワールドチャンピオンを獲得し、高い趣味性とスポーツ性を持ったモデルを続々と登場させているメーカーだ。そんなドゥカティの中にあって、日本で一番売れているのが「モンスター」シリーズ。ドゥカティ伝統のL型2気筒エンジンに小振りな燃料タンクやバーハンドルを組み合わせた、いわば“ネイキッド・ドゥカティ”である。1993年に登場して以来、他のシリーズが大きなモデルチェンジを行い、消え、そして新しいシリーズが生まれてきた中で、モンスターシリーズは15年間進化を続けながら現在に至っている。現行モデルの中で一番歴史の古いシリーズだ。モンスターが発表された当時のドゥカティといえば、レーシングバイクをそのまま公道仕様にしたような、低い前傾姿勢で乗るスパルタンなスポーツバイクであり、それを乗りこなすのが熱狂的なドゥカティファン“ドゥカティスト”の証だった。そんな中にあって、アップハンドルのモンスターはまさに異端児だったわけだ。それがいまやドゥカティワールドへの入口として、排気量やスタイルなど幅広いラインアップを揃え、ドゥカティの中では一番ポピュラーな存在となっている。今回紹介する「モンスターS2R1000」はそんなモンスターシリーズの中で、ドゥカティ伝統の1000cc空冷Lツインを搭載する空冷モンスターのスタンダードなモデルだ。

モンスターS2R1000の特徴

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空冷Lツインデスモの伝統
前衛的なリヤビューの組み合わせ

現行のモンスターシリーズは、水冷エンジンを搭載するS4R/S テスタストレッタ と、空冷エンジンを搭載するS2R1000、そして400がラインアップされている。モンスターS2R1000は、1000ccの空冷2気筒4バルブエンジンを搭載する。このユニットは、ドゥカティが一躍世界のスポーツバイク市場で名を馳せる原動力となった'89年に登場したSS900の900ccエンジンに端を発し、'00年にはインジェクション化、'03年にはツインプラグの1000ccへと進化した、いわば究極の空冷Lツインである。クラッチには乾式を採用しており、信号待ちなどでは「カラカラ」「ジャジャジャジャ」とにぎやかな音を立てるのもドゥカティの伝統のひとつ。ただし最近のドゥカティには国産車のような湿式クラッチを採用したモデルが増えてきており、S2R1000はドゥカティの中では由緒正しきモデルなのかもしれない。

このように伝統的なエンジンに対してS2R1000のデザイン、特にリヤビューは前衛的ともいえる個性を持っている。片持ち式スイングアームによってリアホイールを支持し、マフラーはテールカウル右側に2本出しとするルックスは、見るものに強烈な印象を与える。片持ち式スイングアームは’94年に登場した916以来、スーパーバイクシリーズが採用してきており、ハイパフォーマンスドゥカティの象徴ともいえよう。左側面からはこの銀色に光るブッといスイングアームが、右から見るとブラックアウトされた5本スポークのホイールと2本出しのマフラーが見え、左右で違う表情を見せるのもモンスターS2/4Rシリーズの特徴だ。この片持ち式スイングアームを最初に採用したモンスターは、’03年に登場した水冷のS4Rだった。S4Rは’01年までドゥカティのスーパーバイクシリーズだった996のエンジンを搭載し、発表された当時はまさにネイキッドの格好をした996と形容されたほど。そのくらい片持ち式スイングアームに水冷エンジンという組み合わせはインパクトのあるものだったわけだ。一方、S2R1000はこの片持ち式スイングアームと片側2本出しマフラーという前衛的なフィーチャーに、伝統の空冷2気筒エンジンを組み合わせる。こうした伝統と前衛の組み合わせは、ヨーロッパのデザインや街を見ればどこにでも見つけることができる。S2R1000はそんなヨーロッパ人の感性で生まれたモンスターなのである。

モンスターS2R1000の試乗インプレッション

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マイルドなエンジンフィールに
扱いやすいハンドリング

「モンスターシリーズはドゥカティの中でもコンパクトなだけあって、日本では女性に人気が高いという。確かに小柄な僕がまたがっても無理ないシート高で、両足のつま先をギリギリ地面に付けることができるし、片足と割り切れば余裕も出てくる。さらにバーハンドルによるアップライトなポジションが、ドゥカティのどこかスパルタンなバイクという気負いを打ち消してくれるのがイイ。キーを捻るとインジェクションによって高度に管理されたエンジンが一発で目覚め、自動的にアイドルアップしながらアイドリングする。クラッチはドカ乗りがみんな嫌がる重さだが、それも慣れれば気になるほどではない。シュコッと節度あるシフトフィールのギアを入れて走り出すと、これまでのドゥカティのイメージとは違うエンジンフィールが伝わってきた。というのも、極めて個人的な印象なのだが、ドゥカティのエンジンフィールは波形に例えると角のある感じだった。しかしS2R1000のDS空冷エンジンは、角のない滑らかなパルスという印象だったのである。

さらに、走り出してみるとその違いをさらに感じることになる。というのも、ドゥカティのような大排気量の“ビッグボアツイン”といえば、ほとばしるトルクをイメージしがちだが、実はドゥカティにはそれが当てはまらないことが多かった。ドゥカティのエンジンはどちらかというと高回転型で、それがレーシーなシーンで強みでもあったわけだ。しかしこのS2R1000は2500回転あたりで走っても、とてもスムーズに走ることができるたくましさを備えている。これはインジェクション化、排気量拡大、ツインスパーク化など、空冷エンジンとしてできることをすべてやってきたことの賜物。3000回転から4000回転も回していれば、街中からちょっとしたハイウェイスピードまで、エンジンがぶるぶる震えることなく走ることができる。もちろん、高い回転するまで引っ張り上げればドゥカティ本来のシャープな吹け上がりを見せ、異次元のスピードまであっという間に加速してくれる。しかし、ワインディングにおいてはかえってしっかり使える低回転を使って走ることで、よりアクセルを開けてトラクションを引き出しながら走ることができるだろう。

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また、こうした扱いやすいキャラクターはエンジンだけではない。足回りにもフレンドリーさが与えられていて、例えば高速道路の継ぎ目を越えるときひとつを取ってみても、スーパースポーツ系のバイクだと「ゴンッ」とくるものが、S2R1000では「タフッ」と柔らかなタッチでいなしてくれる。アップライトでタウンユースも多いと思われるこのバイクのキャラクターからすると、凸凹の多い街中の道でも快適に走ることができるはずだ。もちろん、決してフワフワしているというわけではなく、ワインディングで不用意な動きをすることはない。特にリヤサスはとてもよく動いてくれているような印象で、本当に気持ちよくアクセルを開けられる。また、ワイドなハンドルバーによってフロント周りの動きがわかりやすく、モンスターをきっかけにドゥカティのスポーツバイクとしての楽しさに触れようというライダーにとっては、とてもいい相棒になってくれることだろう。

こんな方にオススメ

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間口の広いキャラクターが
ドゥカティの入門に最適

なんといってもこれからドゥカティに乗ってみたいという人にはオススメ。これまでにも、多くの人がモンスターに乗ってから他のシリーズに乗り換えていったというだけあって、デスモドロミックL型ツインエンジン、ドゥカティの走りなどなど、あらゆる面でドゥカティの入り口としては最高だ。もちろん、エントリー向けといっても決して作りに手を抜いてあるわけではなく、車体の各部に“いいもの”があしらわれている。この辺は、ベーシックモデルでも手を抜かないヨーロッパメーカーならではのこだわりである。またS2/4RシリーズにはS4Rという水冷エンジンの選択肢もあるが、こちらはついこの前までトップカテゴリーだった999シリーズのエンジンを搭載している。そのため130馬力を超えるパワーを持ち、そのポテンシャルを使いこなせるのは相当の手練になることだろう。そういう意味でも、使いきれる楽しさを持っているのはこのS2R1000のほうだ。

総合評価

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現行モンスターは15年間の完成形く
幅広い使い勝手の空冷モンスター

昨秋にイタリアで開催されたミラノショーで、次世代のモンスターといえる「モンスター696」が発表され、今年半ばあたりから日本にも導入されてくることだろう。やはりデザインには15年の隔世の感があるが、モンスターの雰囲気はしっかり継承されている。M696の発表によって現行のモンスターシリーズはモデル末期とも言えなくはないが、15年間に渡って数多くのユーザーによって支持され、そのユーザーのニーズによって進化・熟成されてきた完成形だとも言える。普段、水冷のドゥカティに接することが多いのだが、今回の試乗でいまさらながら改めてその違いを感じることができた。最初に感じた、水冷エンジンのフィーリングは角があり、空冷エンジンは滑らかに回る感じ。この違いがスポーティに走るときばかりでなく、普段使いでの快適さをもたらしてくれるからこそ、ドゥカティのなかで一番売れているモデルということになっているのではないだろうか。ドゥカティのようにプレミアムな輸入車を求めるときには、いきおいトップエンドのものを、という向きもあるが、ドゥカティでありながら幅広いバイクライフを楽しめるという意味では、S2R1000は非常にバランスが取れたモデルだと言ってもいいだろう。

モンスターS2R1000の詳細写真

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L型2気筒エンジン

95馬力を発生するDS(デュアルスパーク)エンジン。‘89年に登場したSS900の900ccエンジンから基本設計は変わることなく、インジェクション化、排気量アップ、2プラグ化などで進化を続けてきた。
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片持ち式スイングアーム

S2/4Rシリーズを印象付ける片持ち式スイングアーム。極太アルミチューブで形作られ、リンクを介してリアショックを作動させる。スーパーバイクシリーズをはじめ、ドゥカティのオハコともいえるテクノロジーだ。
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細身だが厚みは充分なシート

シートは細身で上下向に厚みのある形状。前後方向にあまり自由度はないが、柔らかくてコシのあるためワインディングまでシーンを選ばない。シートカバーを外せばパッセンジャー用の小振りな座面が現れる。
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2眼式メーターとハンドル周り

バーハンドルに大きな2眼式メーターを備えるコクピット周りはオーソドックスなもの。モンスターのバーハンドルは一文字に近いようなワイドタイプだが、それでもライディングポジションに違和感はない。

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