テスタストレッタ11°
- 掲載日/2008年10月17日【DUCATIエンジンガイド】
- 構成/VIRGIN DUCATI.com 編集部
エンジンフィールのスムーズさと
低燃費+ロングライフを実現
2010年春にデビューしたムルティストラーダ1200に搭載される水冷Lツインは、その名を「テスタストレッタ11°」という。これはスーパーバイク系に搭載される「テスタストレッタ・エボルツィオーネ」をベースとしている。では、いったいどのような変更が加えられたエンジンなのか。まずはムルティストラーダ1200に搭載されるテスタストレッタ11°のスペックから見てみよう。なお括弧内の数値は1198のものである。
最高出力 :150hp / 9,250rpm (170hp / 9,750 rpm)
?最大トルク:12.1kgm / 7,500rpm (13.4kgm / 8,000rpm)
?圧縮比 :11.5:1(12.7:1)
比較をわかりやすくするため、スペックはイタリア本国仕様のものとした。ちなみに日本仕様の最高出力はムルティストラーダ1200が102ps、1198が155psである。無論これは日本の排ガス規制、騒音規制に合わせた結果だ。
そしてこれを視覚化したのが、下図のグラフ1だ。つまり生粋のスポーツエンジンであるエボルツィオーネを、ストリートやツーリングといった一般的に常用する場面での扱いやすさを向上させた結果、出力とトルクは低くなっている。
11°に隠された
スムーズさを実現した理由
では、これらはどのような変更により実現しているのか。それを簡単に記すと
A) 燃焼の「サイクル間変動」の最適化
?B) エンジン動作の規則性とスムーズさを実現
という2点に集約される。まずは「燃焼サイクル間の変動の最適化」とはどういうことなのか。それを紐解いてみよう。
これはエンジン名にも表されている「11°」が密接に関係している。それを示しているのが、グラフ2である。11°とは、インテークバルブとエキゾーストバルブがオーバーラップする角度を示すものだ。オーバーラップとは吸気と排気いずれのバルブも開いている状態のことだ。テスタストレッタ11°の場合、その間隔はクランクが2回転する720°のうち11°あるということを示している。
ちなみにバルブオーバーラップの間隔(アングル)は、テスタストレッタ・エボルツィオーネでは41°となっている。このオーバーラップアングルの違いは、それぞれこのような特徴となって現れる。
- ● 高い充填効率(高回転時)
- ● 高性能
- ● 工程ごとの変化の減少=より規則的な燃焼
- ● 燃費の向上
- ● 低排出ガス
一般的には、バルブオーバーラップアングルを大きくすると容積効率が高まるため、エンジンの性能を最大限に引き出すことができる。つまり、高性能と引き換えに、扱いやすさと環境性能を求めるための手法、それがバルブオーバーラップアングルを小さくする変更というわけである。この結果、1198と比較して燃費は15%向上し、排出ガスにおいてはHCを65%、CO2を12%削減(触媒浄化装置前での計測数値)している。
これがテスタストレッタ11°が持つ最大の特徴だが、変更点はそれだけにとどまらない。テスタストレッタ・エボルツィオーネからの変更点は、
- ● インテークの流体力学の改善
- ● バタフライ下側に配置したインジェクター
- ● スロットルボディの直径をφ56mm相当へ縮小(楕円形バタフライ)
- ● 排気量とバタフライ~インテークバルブ間の容積との比率
- ● フライホイールの回転マスの増加
といったところに及んでいる。その結果として市街地や悪路などにおける走行時、エンジンの低回転域(1,500~4,000rpm)での挙動が飛躍的にスムーズになり、扱いやすさも格段に向上している。
テスタストレッタ――水冷Lツインはドゥカティの高性能スポーツバイクに搭載されてきただけに、その性質は常に高性能・高出力だった。しかし水冷ならではのマネージメントを活かしながら低回転域でのスムーズさを実現、なおかつドゥカティらしい吹け上がりを併せ持つエンジンがテスタストレッタ11°だ。パワフルなだけではなく扱いやすさを持つこのエンジンの登場は、ドゥカティが新たなステージへ踏み出した一歩ともいえるだろう。
グラフ1
グラフ2
- ● ムルティストラーダ 1200
- ● ディアベル
- 【前の記事へ】
ニューデスモデュエ
関連する記事
-
エンジンガイド
ニューデスモデュエ
-
エンジンガイド
848テスタストレッタ・エボルツィオーネ
-
エンジンガイド
テスタストレッタ
-
エンジンガイド
空冷2バルブ・シングルスパーク
-
エンジンガイド
1100DS
-
エンジンガイド
デスモセディチ
-
エンジンガイド
テスタストレッタ・エボルツィオーネ
-
トピックス
【ニューモデル速報】EICMA 2014