第4回「エンジン診断は計測と経験から」
- 掲載日/2011年03月02日【1098Sエンジン完全分解】
- 文/Keita Kasai 写真/Yasushi Takakura 取材協力/パワーハウスモータークラブ
エンジンの診断とは
10,000kmを走行した1098のエンジンを分解してみた結果、パーツの摩耗は驚くほど少なく、現代ドゥカティのエンジニアリングの水準の高さを目の当たりにすることができた。ハイパフォーマンスマシンだからといって耐久性が低いということはなく、最低限のメンテナンスで好調を維持することができるのだ。
さて、第2回でも述べたが、オーバーホールとは闇雲にやればいいというものではない。パワーハウスではオーバーホールだからといって最初からエンジンを分解することはない。分解前にはまず現状確認をする。今回もパワーハウスモータークラブ代表・中野鉄雄さんにご登場いただこう。
「ベンチテストでパワーを計るのも効果的です。人間の記憶ではなく、客観的なデータとして保存できますから」
データとして残すことでオーバーホール後の効果も確実に分かる。
「あとはシリンダーのコンプレッション。これでピストンやシリンダー、バルブの圧着度など、重要な診断ができます」
分解も各部の寸法やガタを調べ、記録しながら少しずつ行う。これが重要なのだ。このときもメーカーが指定する基準値に入っていればOKというわけではない。バルブクリアランスにしても、メーカー基準よりもさらに厳しい「パワーハウス基準」がある。
オーバーホール時に必ず交換するものは多い。ガスケットや主要なボルト類はもちろんだが、クランクやミッションのベアリングなど、ケースを割らないと交換できないパーツは交換しておきたい。
「ベアリングひとつとっても、同じサイズ、等級でもメーカーはいろいろあります。私たちはベベルの時代からドカを診て、さんざん揉まれているから(笑)、基本は純正パーツを使いますが、例えばクランクのメインベアリングやミッションにはSKF社のベアリングのほうが信頼性は高いといった判断もできるのです」
一方、めったに新品を使わないというパーツもある。バルブクリアランスを決めるシムだ。新品は当たりが付いていないので寸法が若干変わりやすく、逆に2回、または30,000km以上使ったものは偏摩耗しているから使わないそうだ。加えてシムを指先の感覚だけで0.01mm単位で削って寸法を合わせるという。
「1098はよくできています。だから分解整備だけで新品の性能を取り戻しやすい。でも昔からドカをやってきた人間ならさらに性能を引き出せるんです」
高性能なオートバイの真価を引き出せるかどうかは、信頼できるメカニックに委ねられているのだ。
長い歴史から生まれた技
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