第5回「1534の改良点から選ぶ1098の注目ポイント」
- 掲載日/2011年03月09日【1098Sエンジン完全分解】
- 文/Keita Kasai 写真/Yasushi Takakura 取材協力/パワーハウスモータークラブ
新造された1098(右)のヘッドは999(左)にあったプーリーの固定プレートを一体化し、思い切った小型化。ウォータージャケットも増えて冷却性も向上。バルブの挟み角が25→24.3度になり、バルブ径も吸入側が40→42mm、排気側が33→34mmに拡大され、999ではバルブの傘の燃焼室側がどちらも平面だった(下写真)が、吸入側のみ凹んで軽量化されている。
総括:1098エンジニアリングの真価
1098エンジンのオーバーホールについて、これまで4回に渡ってお届けしてきたが、今回が最終回となる。そこで最後はオーバーホールを担当していただいたパワーハウスモータークラブ代表・中野鉄雄さんが見た、1098のエンジニアリングについて語っていただくことで締めくくりたい。
今回のエンジン分解の前から、中野さんの1098への評価は高かった。
「まず車体の基本設計から言っても、998以前はタンブリーニのバイク、999はボルディのバイクだったのが、1098は『ドゥカティのバイク』という印象。性能はもちろん、耐久性や細部の仕上げまで、実に良く出来ている。999に比べて1534個のパーツが新設計になっていますが、その一つひとつの意図が良く分かります」
851でレースに出ていた時代、レース終了後には必ず右のクランクケースにクラックが入っていた。そんな経験をした中野さんだからこそ、1098の機械としての完成度には驚かされるという。
ロッカーアームのレイアウトや、カムの取り付け高さを吸排気で変える、といった部分はもちろんだが、セルのワンウェイクラッチやロッカーアーム、そしてカムホルダーなど、ウィークポイントとされた部分がきちんと直っている。
「開発陣が、実際にバイクを使うユーザーの意見を、すごく真剣にとらえているのが分かります。各パーツが同じように見えても、素材や表面処理を研究して、信頼性はこれまでとは比べ物にならないくらい上がりました。今回の1098Sもスーパーバイクにしては走行距離が多いし、扱われ方も荒かったようなのに、問題はほとんど出なかった。これが証明です」
そう褒める一方で、バイクにユーザーが甘えるべきではない、と中野さんは釘を刺す。
「乗る前にはかならずエアチェック。高速に乗る前は各油脂類の量と汚れを見て、ブレーキホースのフィッティングからのにじみにも注意してください。脊椎パッド入りのウエアを、なんてのは基本。いくら乗りやすく、壊れないからといって気を抜いて乗るバイクじゃありません。『1098に乗るんだ』という緊張感を持つこと。これが第一歩。そして私達ディーラーも、ドゥカティの製品を扱える誇りと責任を持って接しています」
万全の体制で臨んでこそ、ベストパフォーマンスが発揮される。それはバイクとてライダーとて同じことである。ドゥカティ・スーパーバイクという一流のオートバイを走らせる以上、ライダーも同じステージに上がる気持ちで臨むことが、いいライディングにつながるのである。
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