前後17インチの優位性。EXACTをチョイスしたその意味
- 掲載日/2012年02月14日【トピックス】
- 文/Katsumi TAGUCHI 写真/Akira KURITA, Dan KOMATSU
本記事は、 『DUCATI BIKES』 Vol.07 (2010年11月発行)にて掲載されたものです
軽ければ「良い」というものではない
「フルスペック」に宿る本物のクオリティ
足周りの運動性やハンドリングに極めて大きな影響を与えるのが前後ホイールなのは明らかな事実である。
イタリアのドゥカティは、歴史的に見てもホイールや足周りの重要性に早くから気が付いていたメーカーだ。特に、部品単体の剛性だけではなく「締結剛性の向上」がライディングフィールに大きな影響を与えるという事実を、他のどこのバイクメーカーよも早く気が付いていた。
しかしながら、必ずしも市販車に採用されるパーツが「ベスト」だとは言えないのもまた事実。特に、モト GP マシンレプリカとして登場したデスモセディチ RR (D16RR) のような特異なモデルに関しては、ズバリ「イメージリーダー」となるワークス D16GP の雰囲気を崩してはならないマシン開発やパーツのチョイスが、メーカーにとっては極めて重要だった。ある意味、そんなマシン開発時のジレンマによって、結果的には「犠牲」となってしまうものがある。D16RR にとって、それは前後 16 インチホイール&タイヤだったのかも知れない。
イグザクト 17 インチに変更したことでラップタイムが一気に向上 (5秒近くも!) したと語る山下さんの走り。16 インチ時代はおっかなビックリな走りだったが、現在はピレリをチョイスし D16RR を堪能中。
D16RR のオーナーである山下和宏さんは、他にも 1098R を所有し、週末にはサーキットランを楽しみ、ドゥカティカップにも出場した経験があるスポーツライディングファンである。メイド・イン・ジャパンを筆頭にした他の4気筒エンジンモデルとは、まったく異なったエンジンフィールを持つのが D16RR の特徴であり、ドゥカティファンにとってはまさに垂涎のマシンである。
しかし、前述したような理由で「犠牲」となってしまった前後 16 インチホイール&タイヤのチョイスが、スポーツライディングファンの山下さんにとって大きな悩みの種だった。「どこに向かって走っているのか、わからなくなるときがあるんです……」とは山下さん。仮に 16 インチ仕様だったとしても、OEM 以外のタイヤチョイスが可能なら、まだ違ったフィーリングを得られるかも知れない。しかし、チョイス可能なタイヤは1種類しかなく、当然ながら納得がいくタイムを出すことなどできなかった (しかも驚きの価格だった)。
そんな悩みをチームスガイ代表の須貝選手にお話しすると、「使い勝手優先だったら 17 インチもありですよね……」。それは想定外の答えだった。そして、須貝選手の薦めもあり、純国産鍛造マグホイールとして知られる EXACT / イグザクトに注目したのだった。
もはや「軽い商品が当たり前」とまで言われているのが、スポーツバイク用リプレイスメントホイールの世界である。ところが、ホイールが軽くなり過ぎてしまうと、逆に「神経質な乗り物」となってしまうケースが少なくない。軽くし過ぎたことで過敏な反応を示し、時には路面から伝わってくる情報量が多くなり過ぎる傾向もあるようだ。レース界では、もはやホイールは「軽ければすべて良し」という時代ではないのである。
ドゥカティマルボロチームのヘイデン選手。ワークス D16GP は 16.5 インチを採用するが、同サイズでは市販車用ロードタイヤが皆無。やはり楽しむためには 17 インチの採用が賢明だろう。
ちなみに高性能ホイールを分類すると、鋳造ホイールと鍛造ホイールに分けることができ、現在では、鍛造ホイールが最高峰パーツと位置づけされている。鋳造製法も近年の改良で大きな軽量化を実現できるようになっており、事実、鍛造製法は鋳造製法と比べて密度が高い分、軽さのみを追求するのであれば、最新の鋳造技術に分があるケースもあるそうだ。
純国産鍛造ホイールとして登場したイグザクトは、次世代の「フル鍛造」方式をいち早く採用しているのが大きな特徴である。イグザクトは、マグ合金素材の温度を高めて行なう温間鍛造製法を採用している。この鍛造工程にて発生する、いわゆる鍛流線を重要視しているのがイグザクトの特長だ。軽合金を温間鍛造した際に発生する年輪のような脈を、より多く残すことで高剛性&軽量化をハイレベルで実現しているのだ。
発売元であるアドバンテージの中西代表は「鍛造型を大きく作って汎用化を目指していません。鍛造後に切削量が多い商品では鍛造の意味が減ってしまいますから」と語る。そんな最小切削量を実現するために、イグザクトでは温間鍛造後にスピニング加工 (連続絞り加工) を取り入れてリム部を成型。この効果によって鍛流線を可能な限り残しつつ、不用意な切削加工を減らすことに成功。まさに強度アップと軽量化をハイレベルで実現している。そんなこだわりによって、他の商品とは一線を画したフルスペック鍛造ホイール「イグザクト」が誕生しているのである。
「最大公約数を求めることは、我々のような小さな組織には難しいです。しかし、『一人に一個』と言う考えでものづくりに取り組めば、結果として支持を得られるのではないかと……」とはアドバンテージ中西代表。数多くのスペシャルパーツが存在する中で、まさにトップクオリティと呼ぶに相応しい商品、そのひとつにイグザクトがある。
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