ドゥカティ 1987 851 デイトナ プロトタイプ
- 掲載日/2009年11月01日【歴史あるドゥカティを知る】
- 構成/VIRGIN DUCATI.com 編集部
水冷4バルブでEFIを装備
急ピッチで製作されたプロトタイプレーサー
空冷2バルブエンジンでレースに参加することに限界を感じていたドゥカティは、86年のデイトナBOTTでの勝利後、水冷ツインカム4バルブ&フューエルインジェクションを装備したマシンの開発に取り掛かった。すでにエンジンは図面化されており、実装テストにはフレームも含めてファクトリー仕様の750F1が使われた。とはいえ、エンジンで流用されたパーツは、クランクケース等の腰下とクラッチユニットのみで、腰上には水冷ブロックが載り、オルタネーターカバーにはウォーターポンプが追加されたものが組み込まれた。
このマシンは半年足らずで製作され、86年9月のボルドール24時間耐久レースのプロトタイプクラスに出場。車名は748IEだった。結果はリタイヤだったが、確実に成果を得ることができた。そして、翌87年3月のデイトナBOTTでは、新作したクランクケースを持ち、排気量を851ccにアップした851プロトタイプが出場。このマシンは、バンク最上段を駆け抜ける素晴らしい速さをみせつけ、独走で優勝したのだった。
製作期間が物語るように、細部の仕上げが非常に粗雑だ。
ここに紹介するマシンは、そのデイトナでデビューした851プロトタイプである。車体に関しては、ボルドール24時間に出場した748がベースとなっており、ボルドールではイタリアンレッド一色だったボディカラーを、デイトナではイタリアントリコロールに変更して出場した。このマシンが今日の世界スーパーバイク選手権で大活躍しているレーシングマシンのルーツである。今から20年ほど前は、試行錯誤の毎日だったのだろう。それにしても愛らしいマシンだ。
1987 851 デイトナ プロトタイプの詳細写真
ベリア製レブカウンターに水冷エンジンの証でもある水温計を装備する。カウル内部を覗き込むとでも、このマシンの製作期間がよくわかる。
特徴的な造形を見せるガソリンタンク。例によってFRP製で、残量がひと目で確認できるようになっている。もはやこれも伝統か?
ガソリンタンク上面前方にはエアブリーザーが取り付けられている。燃料キャップにもエア抜き用バルブを取り付けられている。
マービック製マグネシウムホイールに小径ディスクローターを装備。スイングアームはベルリッキのアルミ製角断面仕様でスタビライザーが取り付けられている。
ファクトリー仕様の削り出しフロントフォーク・ボトムケースを持つマルゾッキ製M1-Rにブレンボ製4ポッドキャリパーを装備。ローター径は320φだ。
伝統のメガホンマフラーを装備した最後のマシンとなった851。このプロトタイプにはチタン製マフラーが装着されていた。デイトナのバンクを270km/hで駆け抜けているときのエキゾーストノートを聴けた観衆が羨ましい限りだ。まさに爆音だったに違いない。
1987 851 デイトナ プロトタイプのスペック
- 総排気量
- 851cc
- ボア×ストローク
- 92×64mm
- 圧縮比
- 11.6対1
- 最高出力
- 128hp/11,500rpm
- 始動方式
- 押し掛け
- 点火方式
- フルトランジスタ
- クラッチ形式
- 乾式多板
- 変速機形式
- 6速リターン
- キャブレター形式
- ウェーバー・マレリ製EFI
- 乾燥重量
- 148kg
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