VIRGIN DUCATI | 【ドゥカティ ハイパーモタード698モノ 試乗記】扱いやすく過激! ドゥカティの哲学が詰まった新世代モタードだ 試乗インプレッション

【ドゥカティ ハイパーモタード698モノ 試乗記】扱いやすく過激! ドゥカティの哲学が詰まった新世代モタードだ

  • 掲載日/2024年07月12日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/ドゥカティ ジャパン 取材・文/佐川 健太郎 写真/長谷川 徹
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DUCATI Hypermotard 698 MONO
ドゥカティから新型「ハイパーモタード698モノ」が登場した。国内メディア試乗会に参加したケニー佐川がその実像をレポートする。

ハイパーモタード698モノの特徴

パニガーレから派生した高性能シングル

「ハイパーモタード698モノ」はドゥカティ初となるストリート向けの単気筒スーパーモタードだ。エキサイティングな走りでモタードの世界を体現する“ファンバイク”であり、ドゥカティが新たなセグメントに参入するためのベンチマークとして開発されたという。ちなみにモノ(Mono)とは単気筒の意味。今までもVツイン搭載のハイパーモタードは数多あったが単気筒モデルは初めて。また、ドゥカティの単気筒モデルには90年代に「スーパーモノ」という純粋なロードレーサーが存在したが、それとは全くの別物である。ドゥカティでは若者や他ブランドからスイッチしてくるエントリーモデルとしても期待しているようだ。

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「スーパークアドロ・モノ」と名付けられた新開発の水冷単気筒659ccエンジンは、ドゥカティLツイン史上最も高性能を誇った「1299パニガーレ」がベースになっている。例えばピストンや燃焼室の形状、チタン製バルブを含むデスモドロミック・システムなども1299パニガーレ用から直接派生したものだ。ちなみに「スーパークアドロ」とはオーバースクエア(ピストン直径がストローク長に比べて大きい)のエンジンに与えられた名称のことで、10,250rpmをレブリミットとする超高回転型に設定。最高出力はクラストップレベルの77.5ps/9750rpmを発揮しつつ、一方では3,000rpmから最大トルクの70%を発生するなど中速域での幅広いトルクも併せ持っている。さらにエンジンの一次振動を打ち消す2本のバランスカウンターシャフトを備えるなど、公道走行での快適性も重視していることが分かる。

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フレームはスチール鋼管製でスイングアームは両持ちタイプのアルミ製と比較的オーソドックスな作りだ。見た目がコンパクトであるだけでなく装備重量もわずか151kgと軽量。足まわりはマルゾッキ製フロントフォークにザックス製リンク式リアショックを採用し、専用開発のブレンボ製前後ディスクブレーキを装備した軽量鋳造ホイールを採用。サーキットでのパフォーマンスを重視し、車体の重量配分は競合する他のモタードモデルと比較してフロント荷重を大きくした設定になっているという。

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電子制御も充実している。4種のライドモード(スポーツ、ロード、アーバン、ウェット)にコーナリングABS&トラコン、ローンチコントロールなどを標準装備。 極めつけが「スライド・バイ・ブレーキ」と「ウィリー・コントロール」で、進入スライドやウィリーなど、ライダーなら誰もが憧れるモタード走りを実現するという。

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2つのバージョンが用意され、「ハイパーモタード698モノ」はシンプルなドゥカティレッドのSTD版。「ハイパーモタード698モノRVE」はスタイリッシュなデカールで飾られ、クイックシフターを装備された上級仕様となっている。

ハイパーモタード698モノの試乗インプレッション

軽快で自在だがアクションには腕がいる

流れるようなフォルムと洗練されたデザインがドゥカティ流。オフ車由来のモタードとは一線を画すスタイルが印象的だ。

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さっそく試乗開始。跨るとシートはかなり高めだが、日本仕様は車高を40mm下げた設定になるらしいのでひと安心だ。エンジンは単気筒とは思えないスムーズさで回り鼓動も軽やか。バランサーのおかげで振動もほぼない。いかにもドゥカティらしい緻密で高性能なエンジンだ。トルクが乗ってくる5,000rpm辺りで流しながら、スロットルを捻ると軽量な車体が弾かれるように加速していく。ギヤレシオがクロスしているので低速コーナーでも神経質にならず、2速、3速が使えるので扱いやすい。

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やはり美味しいのは高回転だ。試乗したのはショートサーキットだったが、クイックシフターの素早いギアチェンジでパワーバンドキープの走りがしやすい。タイトコーナーの切り返しも前後17インチ軽量ホイールにより倒し込みは俊敏。ブレンボ製ブレーキも確実かつ繊細なタッチで扱いやすかった。ハンドリングはまさに自由自在。リーンアウト気味にイン側の足を出したモタード流でも、ハングオフでも乗りこなせる自在性の高さも魅力だ。

ちょっと気になったのはサスペンション。今回試乗した海外仕様は前後サスペンションのストローク量がオフロードモデル並みで、フラットな舗装路ではやや持て余す感じも。一般ライダーがサーキット走行する場合にはプリロードもダンパーも全体的に締め込んだほうが姿勢も安定して乗りやすいと思った。ショートサスペンションに換装される日本仕様だとハンドリングもまた違った印象になるだろう。

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というように、ハイパーモタード698モノはプロフェッショナルライダーの過激な走りにも応えられるパフォーマンスを持っているが、一方では公道用エントリーモデルとして誰でも気軽に乗れることを目指して作られている。それを可能したのが最新の電子制御だ。4種のライドモードにコーナリングABS&トラコン、ローンチコントロールなどを標準装備するが、 極めつけは「スライド・バイ・ブレーキ」と「ウィリー・コントロール」。これは比較的経験の浅いライダーが、“進入スライド”や“ウィリー”などのモタードスタイルを安全に楽しめるよう実装された電子デバイスだ。

実際にトライしてみたが、ABS介入が最小になるエキスパート向け(レベル2)に設定しても、なかなかリアを流すまでには至らず、たまに僅かにニュルっとくる程度。コーナー進入速度を上げて車体を思い切って寝かす必要があるようだが、残念ながら自分ではそこまで追い込めなかった。また、ウィリーのほうは介入を最小(レベル1)にしてもなかなかフロントが上がらなかったので、思い切ってOFFにしたらちゃんと前輪が浮いてきた。後でドゥカティのスタッフに聞いた話では、電子制御のセンサーが僅かなスロットルの戻し(ビビりとも言う)に反応しているためだとか。つまり「マシンを信用しろ」ということで、使いこなすにはそれなりの慣れと練習も必要と思った。

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ともあれ、単気筒ならではの軽快でシャープな走りとモタードらしい自在性の高さは大きな魅力。街を自由に舞い踊り、ワインディングで大排気量スポーツを追い回す。そんな姿を想像するだけでワクワクするではないか。ドゥカティの新たなアプローチに拍手を贈りたい。

ハイパーモタード698モノの詳細写真

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ヘッドライトはディアベルV4と共通イメージの「ダブルC」デザインのDRL(デイタイム・ランニング・ライト)を備えたフルLEDタイプ。ゼッケン風のメーターバイザーがモタードの雰囲気を盛り上げる。
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1299パニガーレの片側バンクを切り取ったような「Superquadro Mono」エンジン。水冷単気筒DOHC4バルブ659.3ccエンジンはクラストップレベルの最高出力77.5ps/9,750rpを実現。最大トルク63Nm/8,000 rpmの80%以上を4,500rpm~10,250rpmの広範囲で発生する。
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見た目にも非常にコンパクトなエンジンは後端部にピボットやハンガーを持ち、スイングアームやフレームと直接つながる剛性メンバーとしての役割も持たせる構造になっている。試乗車にはオプションのクイックシフターを装備。
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スリムでフラットかつタンクまで覆う前後に長いシート形状。着座位置の自由度が高く、本気のモタードスタイルを追求した設計だ。海外仕様のシート高は904mmと高めだが、日本仕様は40mm低い864mmになる。
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Lツイン搭載の歴代ハイパーモタードの伝統を受け継ぐアップタイプの軽量ツインマフラーを採用。テールライトにも「ダブルC」デザインが採用され、急ブレーキ時には点滅して後続車両に警告するDBL機能も搭載。
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ENKEI製17インチ鍛造アルミY字型スポークホイールは、同様の鋼線スポークホイールに比べて0.5kg軽く俊敏なハンドリングを実現。ブレンボ製4Pラジアルキャリパーとφ330mm シングルディスクを組み合わせる。
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フロントフォークはφ45mmマルゾッキ製フルアジャスタブルタイプを採用。ダンパーはフォークトップのダイヤルにより調整可能で伸び側は右、圧側は左にマウントされる。プリロードは両側で調整可能。
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ストレート形状の鋳造アルミニウム製両持ち式スイングアームにより高い剛性と軽量化を両立。リアブレーキもブレンボ製2Pキャリパーとφ245mmシングルディスクの組み合わせ。
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リアサスペンションにはザックス製フルアジャスタブルタイプを装備。オフロード仕様のリンク式モノショックでストローク量は240mmとクラス最長レベルだ。サグ(初期沈み込み量)を多くとることで急ブレーキ時の後輪の接地を確保。
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コンパクトな3.8インチ LCDディスプレイ。黒バックに白い数字が浮き上がる視認性の高い表示になっている。右上にパニガーレ V4同様のギアチェンジ・インジケーターを装備。
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ウインカースイッチは長押しで電制へのアクセス、およびライドモードのモード切り替え機能を兼ねている。上下の矢印キーで画面をスクロール可能。操作はシンプルで使いやすい。
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フロント120/70-17、リア160/60-17の最新のピレリ製ディアブロ・ロッソ4タイヤを標準装着。サーキット走行にも対応する十分なエンドグリップを備え、スライドに対する過渡特性も穏やかだ。

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