VIRGIN DUCATI | ドゥカティ スーパーバイク1299パニガーレS 試乗インプレッション

スーパーバイク1299パニガーレSの画像
DUCATI Superbike 1299 Panigale S

ドゥカティ スーパーバイク1299パニガーレS

  • 掲載日/2015年06月19日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・文/中村 友彦  写真/柴田 直行

27年の歳月を経て、排気量が1.5倍、最高出力が2倍となった
伝統のドゥカティ・スーパーバイクシリーズ

2015年度から販売が始まる1299パニガーレ/Sは、1988年型の851に端を発するドゥカティ・スーパーバイクシリーズの最新作である。と、サクッと書いてはみたものの……、27年前に851がデビューを飾った際に、このシリーズの排気量が1.5倍以上に拡大され、最高出力が2倍以上(102psから205ps)にまで向上することを想像できた人は、世の中にいないのではないだろうか。もっとも、1994年型916=114ps、2003年型999=124ps、2007年型1098=154ps、2009年型1198=170ps、2012年型1199パニガーレ=195psという歴代モデルの変遷を考えれば、1299パニガーレの排気量と最高出力は妥当と思えるけれど、かつてハンドリングと車重の軽さが魅力と言われたドゥカティ・スーバーバイクは、近年ではライバル勢を圧倒する高出力車に変貌を遂げているのだ。

851から1198では鋼管トレリスフレーム+パンタ系をルーツとする水冷Lツインエンジンという構成を、頑なに守り続けたドゥカティ・スーパーバイクシリーズだが、1199パニガーレはMotoGPレーサーの技術を転用したアルミモノコックフレームと、全面新設計のスーパークアドロエンジンを採用。1299パニガーレはその基本設計を踏襲しながら、大幅刷新を行ったモデルだ。

スーパーバイク1299パニガーレSの特徴

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クラストップとなる最高出力を獲得する一方で
シャシーと電子制御の刷新で扱いやすさに磨きをかける

刷新された外装部品や大幅なバージョンアップを受けた電子制御など、先代の1199パニガーレと比較すると、さまざまな面で進化を遂げた1299パニガーレ。とはいえ、このモデルで最も注目すべき要素は、ドゥカティ・スーパーバイクの歴史で初めて、レースレギュレーションに合致しない1,285ccという排気量を採用したことだろう(2015年現在のスーパーバイクレースの排気量規定は、2気筒が1,200cc以下、4気筒は1,000cc以下)。もっとも、ホモロゲーションモデルのパニガーレRは、2015年型も従来と同じ1,198ccの排気量を維持しているのだけれど、あらためて考えてみると、絶対的なパワーより、サーキットや峠道での運動性能が重視されるスポーツモデルに、約1,300ccのエンジンを搭載するというのは、一昔前は考えられなかったことである。

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排気量拡大によって得られた一番のメリットは最高出力の向上で、フルパワー仕様の1299パニガーレは、クラストップとなる205psという数値を公表している(1199パニガーレは195ps。ちなみに、1299パニガーレとほぼ同時期にデビューすることとなったヤマハYZF-R1/Mは200psで、BMWのS 1000 RRは199ps)。少なくとも十数年前までは、馬力では4気筒にかなわないと言われていた2気筒だが、ある意味では掟破りという手法を用いたドゥカティは、ついにリッタースーパースポーツ界の常識を打ち破ったのだ。

1299パニガーレは、単に速さだけを追求したモデルではない。ディメンションを刷新したシャシーは(キャスター角を24.5度から24度に変更したうえで、スイングアームピボット位置を4mm下げている)、より扱いやすさを増しているし、ライダーをサポートするさまざまな電子制御は、1199パニガーレよりも友好的かつ自然になっている。そんな1299パニガーレの開発コンセプトは、“サーキットではかつてないほどの速さを、ストリートではかつてないほどの柔軟性を”だ。なんとも欲張りな発想ではあるけれど、このモデルにはそれが納得できるだけの、守備範囲の広さが備わっているのだ。

スーパーバイク1299パニガーレSの試乗インプレッション

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すべてのパーツ/機構の調和がとれているから
乗り手は早い段階からスポーツライディングを満喫できる

前述したように、1299パニガーレの最大のトピックは、排気量を1,198ccから1,285ccに拡大したエンジンである。ただし、僕がこのモデルで最も感心したのは、シャシーの扱いやすさだった。先代の1199パニガーレでは、革新的なモノコックフレームを導入すると同時に、最先端の電子制御を一気に投入したためか、場面によってはまとまりの悪さを感じることがあった。しかし、弟分の899パニガーレやファクトリーレーサーの開発で得た技術をフィードバックした……と思われる1299パニガーレには、そういった気配がほとんどない。ハンドリングはかつてのトレリスフレーム時代を思わせるほど素直だし、1199パニガーレで気になった超高速域での不安は解消されているし、新たに投入されたセミアクティブサスペンションや、電子制御式ステアリングダンパー、レーシングABS、ウイリーコントロール(この4つの機能は、前後/左右/上下方向の加速度測定ユニット=IMUを搭載する1299パニガーレSのみが採用)の作動にも、違和感は皆無。妙な表現になるけれど、1299パニガーレにはすべてのパーツ/機構の調和がとれてきた印象があって、そうなると乗り手としては疑問や怖さを感じることなく、早い段階からスポーツライディングを満喫できてしまうのだ。

その一方で肝心のエンジンは、排気量を約90cc拡大しただけあって、当然1199パニガーレと比較すればパワフルになっている。もっとも、最高出力が控えめな日本仕様だけに乗って(1199パニガーレ=135ps、1299パニガーレ=175ps)、そう語っていいかどうかは微妙なところだが、全域で感じるトルクの太さや、優しさと鋭さを絶妙の塩梅で両立したスロットルレスポンス、スーパーバイクらしからぬ低中回転域のマナーのよさなどは、1199パニガーレとは一線を画する、1299パニガーレならではの魅力。ちなみに、試乗前の僕が心配していた排気量拡大による振動の増加や吹け上がりの重さは、エンジン内の重量バランスや燃料噴射マップの見直しなどが功を奏しているようで、今回の試乗では一切感じられなかった。

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1299パニガーレに採用された数多くの電子制御の中で、僕が特に感心したのは新世代のクイックシフターだ。この機構の美点は、アクセル/クラッチに一切触れずにギアチェンジが行えることだが、1199パニガーレのクイックシフターがアップ時しか使えなかったのに対して、1299パニガーレはダウン時にも対応している。具体的には、スロットルを閉めた状態で、乗り手がシフトペダルを押し下げようとすると、マシン側が自動でクラッチ操作とブリッピング=空吹かしを行ってくれるので、無造作に左足に力を込めるだけで、スムーズかつ確実なシフトダウンができてしまうのである。なお、クイックシフターの美点が如実に感じられるのは、コーナーの入り口だろう。面倒なアクセル/クラッチ操作に気を取られず、ブレーキングとライン取りに集中できる1299パニガーレは、自分自身のライテクが向上したと錯覚してしまうほど、速いスピードでコーナーに入って行ける。僕は、バイクの操作で最も難しいことは直進から旋回への移行だと考えているのだが、1299パニガーレが採用する新世代のクイックシフターは、その難しさを劇的に軽減してくれるのだ。

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1299パニガーレの電子制御についてはもうひとつ、新たに導入されたセミアクティブサスペンション、オーリンズのスマートECにも触れないわけにはいかない。こういった自動補正機能付きのサスペンション装着車に試乗する場合、予想外の動きをされると困るので、いつもの僕は、まずマシンの反応をじっくり観察しようという意識を持つのだけれど、1299パニガーレに乗った僕はそんなことは微塵も考えず、早い段階からごく普通に走っていた。結果的に前後ショックが低速コーナーではしなやかに動き、高速コーナーではしっかり踏ん張っていると気づいたのは、ある程度の時間が経過してからだったのだが、それほどまでにスマートECの自動補正は自然だったのである。もちろん、サスペンションの動きに対する印象は人それぞれだから、乗り手によっては違和感を抱くケースがあるかもしれない。とはいえ、1299パニガーレが導入するスマートECは、5種類の基本設定(SOFTEST/SOFTER/DEFAULT/HARDER/HARDEST)が準備されているうえに、任意でダンパー設定を固定することも可能だから、アジャスト機能を使いこなせば、どんな乗り手にも対応できるのだろう。

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べつに疑っていたわけではないけれど、“サーキットではかつてないほどの速さを、ストリートではかつてないほどの柔軟性を”という1299パニガーレの開発コンセプトは、ウソではなかった。このモデルは間違いなく、史上最強のドゥカティ・スーパーバイクである。しかしながら、1299パニガーレが誰にでもオススメできるかと言うと、僕は必ずしもそうは思わなかった。やっぱりこのモデルは、ある程度の経験を持つライダーが積極的な姿勢を見せて初めて、真価を発揮するのだから。扱いやすさは歴代のドゥカティ・スーパーバイクシリーズで最高になっているものの、本質的なキャラクターは歴代ドゥカティ・スーパーバイクと同じ。その事実をどう捉えるかは人それぞれだが、圧倒的なパワーを得ると同時に各部が洗練されても、ドゥカティらしさが失われていないことに、僕はちょっとした安堵を覚えたのである。

プロフェッショナル・コメント

発売前のディーラー研修で体感した
第2世代パニガーレの大きな進化

ニューモデルが登場すると、その発売前には必ずドゥカティディーラーを対象とした研修会が行われます。これは、実際に車両を販売するにあたって正しい情報を提供できるようにとドゥカティジャパンが主催しているもので、1299パニガーレシリーズについても技術的な説明や、サーキットと一般公道での体験講習を受けました。

パニガーレの第2世代である1299パニガーレは、ドゥカティの代名詞とも言えるスーパーバイクシリーズだけあって、全精力を注ぎ込んだビッグチェンジが行われています。私の経験上、同一シリーズでここまで大きく進化したのは初めてかもしれません。サーキット走行はもちろん、公道での扱いやすさが向上しました。特に、1299パニガーレSに採用されたさまざまな電子デバイスがライダーに安心と安全をもたらしてくれます。オーリンズ製のスマートEC(セミアクティブサスペンション)がとても良くできていて、走行ペースに合わせて減衰圧やステアリングダンパーを自然に調整し、ライディングをサポートします。ライダー主導で走りたい場合は、従来のような非アクティブ設定とすることも可能です。

全国のドゥカティネットワークでは、2015年7月の発売と同時に店頭試乗車を用意しますので、MotoGPやSBKで培った最新テクノロジーをフィードバックした進化をぜひ体感してみてください。(ドゥカティ浜松 ストアマネージャー 鈴木 啓之郎さん)

取材協力
住所/静岡県浜松市南区安松町21-6
Tel/053-411-8880
営業/10:00-19:00
定休/水曜、第1・3火曜

スーパーバイク1299パニガーレSの詳細写真

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エアダクトを拡大したフェアリングや空力性能を意識したバックミラー、大型化されたスクリーンなどは新設計。1299パニガーレSは、フルLEDヘッドライトを採用している。
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今回試乗した1299パニガーレSの前後サスペンションはオーリンズ製で(フロント=NIX、リア=TTX)、ダンパーユニットには減衰力特性を変更するための配線が接続されている。
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トップブリッジ前部に横置きされるステアリングダンパーは、電子制御式のオーリンズ。前後ショックユニットと同じく、この部品も状況に応じて特性が変化。
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前後ホイールはマルジーニのアルミ鍛造。ブレーキ構成パーツは1199パニガーレ用を踏襲するものの、ボッシュ製ABSユニットが最新型の9.1MPに進化。
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116mmのピストン径と1,285ccの排気量は、いずれもドゥカティ史上最大。フルパワー仕様は1199パニガーレ+10psとなる205psをマークするが、日本仕様は175ps。
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シフトロッドの途中に見えるセンサーはクイックシフター用。内部には双方向で作用するマイクロスイッチが設置され、ECUに信号を送る。
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2本出しマフラーは日本仕様のための新作。生産は1199パニガーレ用の1本出しを手がけたテルミニョーニではなく、ラフランコーニが担当している。
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ローレットが刻まれた新作ステップバーは、1199パニガーレの難点だった足の滑りを解消。ただしステップ左右幅は依然として、やや広めの感がある。
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シート高は899パニガーレと同じ830mm。1199パニガーレで感じた前下がり感は解消されたものの、1299パニガーレのパワーを考えると、表皮にはもっとグリップ力がほしい。
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3分割式のテールカウルやナンバープレートホルダーも1299パニガーレ用の新作。既存の1199パニガーレと同じく、タンデムシートを装着すれば2人乗りも可能だ。
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TFT液晶ディスプレイの視認性は実に良好。速度や回転数、ギアポジションといった基本情報に加えて、各種電子制御の設定もこの画面に表示。
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左側スイッチ下のアップ&ダウンスイッチは、トラクション/エンジンブレーキ/ウイリーコントロールの設定変更時に使用。走行中の切り替えも行える。

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