スマートに見えてワイルドな性格を持つ怪物、ドゥカティ モンスター821ステルスを試乗インプレッション
- 掲載日/2019年09月30日【試乗インプレッション】
- 取材・文・写真/小松 男
ストリートファイターの先駆けとして登場し
現在もなお、その強いキャラクターを発し続ける
鬼才ミゲール・ガルーツィの手によって作り上げられた、初代モンスターが登場したのは1993年のこと。当時のスーパーバイクモデルであった851系のトレリスフレームに、空冷Lツインエンジンを搭載し、カウルを持たず、バーハンドルを採用したモンスターは、ドゥカティの新しい時代を象徴するモデルとなった。その後、2000年代に入り、水冷エンジンモデルの投入や、フレームやスイングアームを変更したモデルへと進化しながら、モンスターは独自路線を進むようになる。そして2008年にはスタイリングを一新した2代目モンスターが登場し、その一方で、スーパーバイクをベースとしたカウルレスモデルであるストリートファイターも導入するなど、ややキャラクターが被るモデルがラインアップされてしまう事態となるが、モンスターは着実にブラッシュアップされ続け、現在に至っている。ここでは3代目とされる現行モデルの中でも、ミドルクラスにあたるモンスター821ステルスをフューチャーし紹介してゆく。
モンスター821ステルスの特徴
大でも、小でもない、中間排気量だからこそ、
幅広いライダー層に支持されるモンスター
現在のモンスターファミリーは、水冷エンジンを搭載する1200と821、空冷エンジンを採用した797と、大きく分けて3モデルが存在する。RやSバージョンを持つモンスター1200は、装備、パフォーマンスともに秀でており、ファミリーのフラッグシップモデルなのだが、スタンダードモデルでも150馬力近くを絞り出し、過剰なほどとも言える性能は、ある程度高いスキルを持っていた方が楽しめることは確かだろう。
モンスター797は、一度採用を辞めていた時期があった空冷エンジンを復活させたモンスターであり、独特の鼓動感は昔ながらのドゥカティの魅力が垣間見える。十分なポテンシャルを備えているが、エキスパートからすると若干物足りなく感じることもあるだろう。その中間、ちょうどいい頃合いのモデルが、モンスター821なのだ。さらにはここで紹介するステルスはスペシャルペイントが施されるほか、ドゥカティ・クイック・シフト・システム、アジャスタブル・フォーク、メーターバイザーなどを標準で装備する豪華版となっている。
モンスター821ステルスの試乗インプレッション
扱いやすく、かつ強烈なパフォーマンスを発揮する
円熟期に入ったイレブンディグリーエンジン
モンスター821ステルスが国内で発売されたのは2019年6月と、つい最近のことだ。スタンダードモデルの登場は2014年で、2018年に一度ブラッシュアップされており、その派生モデルという立ち位置である。
まずスタイリングだが、一目見ただけでモンスターだと分かる、アイコン的強い存在感を示しており、さすがドゥカティと言わざるを得ない。それまでカウル付きスポーツモデルばかりを手掛けていたドゥカティが、初代モンスターを発表した当時、既存のドゥカティスタ(ドゥカティオーナーを指す)は、批判的姿勢を取った。しかし、世の中的には大きく受け入れられ、世界中で大ヒットするモデルとなった。
その後10年以上ほぼデザインを変えないまま売られ続けた後、2008年に発表された2代目は、初代のデザインエッセンスを踏襲しながら、スタイリングを一新した。スーパーバイクをベースとしたネイキッドモデルであるストリートファイターが登場したことにより、2代目モンスターに水冷エンジンモデルは用意されなかった。そして2014年には現行モデルとなる3代目モンスターが登場することになる。心臓部には水冷テスタストレッタ11°(イレブンディグリー)エンジンを搭載し、ハイパフォーマンス化が図られているのだが、面白いのは2017年に追加されたモンスター797では空冷エンジンが復活しているところだ。水冷ハイパフォーマンスモデルと、空冷トラディショナルモデルを用意することで、幅広いライダー層に訴求してゆくことの表れであり、いかにドゥカティがモンスターというモデルを大切にしているかがうかがい知れる。
イグニッションをオンにして、TFT液晶ディスプレイが点灯し、イニシャライズされたことを確認してからセルスイッチを押し、エンジンを目覚めさせる。やや乾いたエンジン音、そして野太いエキゾーストノートは、良く考えられて作られている音色だ。クラッチを繋ぐと、軽い車体はいとも簡単にスルスルと前へと進みだす。配下のモンスターは、速く走らせろと言わんばかりに、せかしてくるようだが、エンジンやタイヤをはじめ、各部が温まるまでは慎重に、これもまたドゥカティの儀式だ。それにしてもドゥカティ・クイック・シフト・システムのセッティングが良い。こう言っては何だが、ドゥカティがこのシステムを導入し始めた頃、特に低回転域でのシフトチェンジの際、調教しきれていない場面を感じられたのだが、現在はそれが払拭されたどころか、クラッチレバーを使わずにサクサクとシフトが入るのが、とても心地よい。
低めにセットされたバーハンドル、高めの着座位置とステップのおかげで、自然とスポーティなライディングポジションとなる。高速道路にステージを移し、スロットルをひねれば目の前の景色はあっという間に後方へと去ってゆく。109馬力の最高出力は9250回転で、最大トルク86Nmは7750回転で発生させるとあるが、低回転域からパワー感があり、さらに6000回転を超えたあたりからは突き抜けるような加速を得られる。もちろん1200と比べれば低い数値ではあるが、一般的なスキルのライダーでは、これでも持て余してしまうかもしれない。ハンドリングも秀逸で、クイックでありながらも、しっとりとした手ごたえが残る。全体的にドゥカティらしいスポーツライクな味付けとされており、終始脳内麻薬が出まくりだ。
1000cc未満のミドルクラススポーツモデルマーケットには、ライバルが多数存在するが、それでもドゥカティならではのプレゼンスは健在であり、モンスターに代わるバイクは無い。特にこのモンスター821ステルスは、トータルバランスが高く、歴代モンスターの中でもベターモデルに仕上がっている。
最後にひとこと加えておくと、どのモデルも以前に比べれば乗りやすくはなっているが、優しいわけでは無い、それがドゥカティというブランドのバイクであり、価値のあることなのである。
モンスター821ステルスの詳細写真
関連する記事
-
ライフスタイルDUCATI
#016 モンスター1200 と人気ゲーム “モンハン” がコラボレート
-
試乗インプレッション
ドゥカティのモンスター誕生25周年を記念した新型モンスター821
-
試乗インプレッション
ドゥカティ モンスター1100EVO
-
ライフスタイルDUCATI
#015 “MONSTER” アイコンを探してモンスターハンターも GET
-
試乗インプレッション
ドゥカティ モンスター821
-
試乗インプレッション
ドゥカティ モンスター1100S
-
試乗インプレッション
ドゥカティ モンスター1200R
-
試乗インプレッション
ドゥカティ モンスター1200S
-
試乗インプレッション
ドゥカティ モンスター796