【ドゥカティ 新型ムルティストラーダV4S 海外試乗記】快適で安全、スタイリッシュに冒険の旅を楽しむためのバイクだ!
- 掲載日/2024年11月05日【試乗インプレッション】
- 取材協力・写真/ドゥカティ ジャパン 取材・文/佐川 健太郎
DUCATI 新型ムルティストラーダ V4S 試乗インプレッション動画
ムルティストラーダV4S 特徴
パフォーマンスはそのままに万能性能を深化
ムルティストラーダが掲げるコンセプトは「4 bikes in 1」。スーパースポーツとオフロードバイク、長距離ツアラーと街乗りバイク、その4つのカテゴリーの長所を兼ね備えた万能マシンとして2010年に初登場した。2021年には従来のV2からより強力なV4エンジンを搭載した完全新設計モデルへと変身。そして今回、2025モデルでは新機構を搭載してさらなるアップグレードを図ってきた。
クラス最強レベルの最高出力170psを発揮する「V4グランツーリスモ」と名付けられた水冷90度V型4気筒1158ccエンジンは従来モデルを踏襲しつつ、新たにエンジン休止システムを導入。低回転時に前方バンク2気筒のみを稼働させることで低燃費走行やエンジンの熱対策を向上させている。ちなみにパニガーレやストリーファイターに搭載されているV4エンジンとは排気量や出力特性も異なる専用設計である。バルブ駆動方式も伝統的なデスモドロミックではなく耐久性に優れるスプリング方式とすることで6万kmのメンテサイクルを実現。距離を走るツアラーとしては大きなメリットとなっている。
車体も改良が加えられた。アルミ製モノコックフレームはスイングアームピボット位置を1mm上げることで加速時やタンデム走行でのトラクションを向上。電子制御もさらに進化し、停止直前に車高を自動的に下げる機能の他、新たに「ウェット」モードを追加し雨天走行をサポート。また、前走車を自動追尾するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)やバックミラーの死角に入ってきた車両を検知するBSD(ブラインド・スポット・ディテクション)に加え前方衝突警告機能も新たに実装されるなど、2025モデルはより安全で快適な方向へと深化を遂げている。
ムルティストラーダV4S 試乗インプレッション
足着きがぐんと向上、専用モードで雨天でも安心だ
一見大きく変わった感じはしないが、よく見るとフロントからサイドにかけてのデザインや、洗練されホイール、サイレンサーの形状も新しくなっている。シートに跨がった瞬間「低い」と感じる。新型には自動車高低下機能(オートマチック・ロワリング・デバイス)が搭載され、速度が10km/h以下になるとリアサスペンションのプリロードが調整されてシート高が約30mm下がる仕組み。ビッグアドベンチャーモデルと聞くと普段なら身構えるが、足がしっかり着くというのは心強い限りだ。
ライディングモードによってがらりとキャラが変わるのは従来どおり。市街地からワインディングに入りライディングモードを「アーバン」から「スポーツ」に切り替えると、アクセルのレスポンスが一段と鋭くなりエンジンパワーが盛り上がる。電子制御サスペンションによってリア車高が上がって減衰力も強くなり、走る気満々のスポーツ仕様に様変わりするのだ。V4エンジンの加速は強烈だが、鼓動はキメ細かくパワーデリバリーはスムーズ。低回転でも途切れないトルクはV4ならではで、次々に現れる急こう配のタイトコーナーもギアを落とすことなくグイグイ登っていく。ハンドリングも秀逸。軽快さの中に19インチホイールらしい安定感があり、狙ったラインをきれいに描ける正確さはドゥカティならではだ。
雨の中では新型の実力が光った。スイッチ一つで「ウェット」モードに切り替えると、出力特性が穏やかになりコーナリングABSやトラコンも最適化され、サスペンションも低ミュー路面でのグリップを優先した「ウェット」専用の設定へと自動調整される。また、バンプ検知機能により路面の大きな凸凹もスムーズにいなしてくれるなど、とにかく電制が賢い。とりわけ印象に残ったのが前後連動ブレーキ。従来のフロントからリアへの制御だけでなく、新たにリアブレーキ操作だけでも前後に最適な制動力を配分される機能が付くなど至れり尽くせり。けっこうなペースで走っていても、ほぼリアブレーキだけで事足りてしまう。という感じで変な話、土砂降りの中でラフにアクセルを開けても急ブレーキをかけても、なかなか破綻してくれないのだ。「そんなマシン任せは望んでないよ」という人もご安心を。必要に応じてサポート機能をオフにもできるので、自分で操る楽しさを奪われることはないのだ。
ダートを本気で走らせようとする意志が見える
ダートセクションではオプションのクロススポークホイールにデュアルパーパスタイヤを装備した仕様に乗った。走行中に「エンデューロ」モードに切り替えるとエンジン出力が115psに抑えられ出力特性もよりマイルドに。電制サスは悪路に備えて自動的にプリロードを上げつつもストロークする設定となり、リア側のABSが解除されてトラコン介入度も最小限となる。簡単にいうとオフロードバイクに変身するわけだ。アルミ製ボックスを車体左右にマウントした状態だったが普通に走れるし、その気になれば後輪を軽く流しながらコーナーを立ち上がるアドベンチャーらしい走りもできてしまう。この巨体でオフロードを本気で走らせようというドゥカティの意思が強く伝わってきた。また、ACCやBDS、新たに追加された前方衝突警報などのアシスタンス機能も使ってみたが、とりわけ長距離ツーリングや悪天候時には頼りになるはずだ。
新型ムルティストラーダV4Sは従来からの優れたパフォーマンスはそのままに、より扱いやすく安全で快適な万能ツアラーへと進化した。泥まみれになって我武者羅に突き進むのではない、スタイリッシュに冒険の旅を楽しむためのバイクだ。
ムルティストラーダV4S 詳細写真
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