ドゥカティ 新型スクランブラー・アイコンの海外試乗インプレッション
- 掲載日/2018年12月04日【試乗インプレッション】
- 写真:DUCATI 取材協力:DUCATI JAPAN 取材・文/鈴木 大五郎
自由で気楽なスクランブラーのキャラクターがより強調
見た目からは予測不能な素晴しいバージョンアップ具合
ドゥカティ・スクランブラーが登場したのが2015年。それまでのドゥカティのマシンとは一線を画したデザインやキャラクターに戸惑いもあったものの、そのマシンは瞬く間に市民権を得て、今や同社の販売が最も多いシリーズの1台となっている。
とはいえ、このマシン。もともとドゥカティが販売していたマシンにインスピレーションを得て、現在に蘇ったと言う経緯がある。まだ、生粋のオフロードマシンが存在していないような時代に、オンロードマシンをベースに余分なパーツを取り外し、ブロックタイヤを履かせたオンオフ両用マシン。「スクランブラー」というジャンルがアメリカで盛り上がりをみせていた。
そんな背景があるなか、アメリカでドゥカティの輸入代理店を営んでいたベルリナー兄弟の要請をもとに、1962年に発売されたのがオリジナルのスクランブラーである。そしてここにきて、このスクランブラーというジャンルのマシンが人気となっているタイミングで現代版スクランブラーは発売されたのだ。
スポーツマインドを全身から放つマシンが多い同社のなかにあって、スクランブラーはとにかく気楽で自由なマシンとなっている。コンパクトな車体にリラックス出来る乗車姿勢。程よくパワフルなエンジンと、今までドゥカティに接点のなかったライダーを取り込むことにも成功。さらにバリエーションモデルも次々にリリースされ、2018年には1100も発売。スクランブラーファミリーがより広がりを見せたのだった。
そんななかで最もスタンダードとなるマシン、アイコンがブラッシュアップ。イタリア・シエナにて発表試乗会が開かれた。見た目の印象は従来モデルと大きく変わらない。しかし細かく見てみるとヘッドライトのデザインやテールライトのLED化の他、ハンドルやシートも変更され、ライディングポジションも異なっている。
また、ホイールのスポーク部が切削加工されていたり、エンジンがブラックアウトされたりと細かいアップデートが随所にみられる。エンジンをかけるとLツインらしいドコドコとした鼓動感は健在だ。しかし、走り出してマシンのフィーリングが大きく変わっていることに驚く。とくに極低速域での躾具合が大幅に向上しているのだ。従来のスクランブラーでは、とくに発進時。アクセルとクラッチを丁寧に操作しているにもかかわらず、ライダーの予想に反して、パワーがドンッと出てしまうことがあった。
また、それを防ぐようにアクセル開度を少なくし過ぎてしまうと今度はエンストしてしまうことも。慣れの問題と個人的にはさほど気にしていなかったのであるが、あまりバイクに興味のなかった人までその世界に取り込んだ責任もふくめ、改善が望まれていた。
しかし新型はそんな注意を払うことをせずとも、何の問題もなかったようにスルスルとマシンを前にすすめる。これは油圧式となり、操作する力が軽減されたクラッチの恩恵もあるかもしれないが、やはり大きいのはエンジンマネージメントの熟成によるものだろう。Lツインらしい鼓動感はしっかり残っているものの、低速域でのスムーズさが格段に向上していたのだ。
そして、それはそのまま高回転域まで続く、スムーズな回転上昇につながっていく。同じエンジンを使用しているのに、こんなにフィーリングが変わるのかと驚かされる。このスムーズな印象を後押しするのがサスペンションの仕様変更である。まず、初期荷重の沈み込みが適切で当たりの優しさ、安心感が格段に向上している。それによりタイヤの接地感が高まり、マシンの状況をより把握しやすいようになっているのだ。それでいて、ハードに走り始めればその手応えはしっかり高まってくる。取っ付きは良いのに、懐は深い。ドゥカティらしいスポーツ性は存分に味わえるマシンとなっているのだ。
シートの変更により、長時間のライディングでの快適性が高まったことも嬉しい。また、コーナーリングABSの装備等、安全性も高まっていることも特筆すべき点。スタイリングに大きな変更のなかったアイコンであるが、乗ればその違いは明らか。格段のポテンシャルアップとともに、スクランブラーらしい自由なキャラクターもより高まっていたのだった。
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