ドゥカティ スクランブラー デザートスレッド
- 掲載日/2017年08月10日【試乗インプレッション】
- 取材協力/Ducati Japan 写真・文/田中 宏亮
オフロードスタイルを極めた
ワンランク上のスクランブラー
2015年にデビューして以来、着々とバリエーションモデルを増やしてきたドゥカティ スクランブラー。この2017年、スクランブラー カフェレーサーとともに目玉モデルとして登場したデザートスレッドは、シティライドがメインのカフェレーサーとは真反対のリアルオフロードモデルとして仕上げられた一台だ。「スクランブラー」というスタイルの原点はアメリカのダート仕様バイクであるわけだから、現代版モデルとして一層スクランブラーテイストが強くなったとも言えよう。この世界観に新たな可能性を広げようとするデザートスレッドのキャラクターとライドフィールに迫ってみた。
スクランブラー デザートスレッド の特徴
ひと回りして原点回帰した
ドゥカティの新たな定義
今やドゥカティの中でもすっかり人気モデルとなったスクランブラーが登場したのは2015年。モンスター796から受け継いだ空冷L型2気筒2バルブエンジン(排気量 803cc)を心臓に、新設計のフレームとボディデザインで1960年代アメリカに投入された「ドゥカティ スクランブラー250」を現代風にアレンジしたニューカマーだった。ただ、どちらかと言えばダートを主戦場とするオフロード仕様を表す「スクランブラー」というネームブランドに対し、現代版スクランブラーはそのエッセンスは受け継ぐものの、どちらかと言えばアスファルトシーンを駆け抜けるストリートバイクとして仕上げられていた。
デビュー年にはベーシックな「アイコン」のほか、ビンテージ感を意識した「クラシック」、よりレーシーなテイストを含んだ「フル・スロットル」、そしてオフロード仕様を想定した「アーバン・エンデューロ」という4つのタイプが揃えられ、アイコンを軸としたバリエーション豊かなライフスタイルの提案が印象的だった。
スクランブラー デザートスレッド(以下 デザートスレッド)を紐解いていくにあたり、改めて「スクランブラー」というスタイルの定義を明確にしておきたい。このスタイルが生まれたのは1960年代のアメリカで、前後18インチホイールにツインショック仕様のフレーム構造を軸とする英トライアンフの人気バイクをオフロード仕様にカスタムし、野山へ走りに行こうというブームがキッカケ。故スティーブ・マックイーン主演の映画『栄光のライダー』(On Any Sunday / 1971年)の世界がまさにそれだ。今もそうだが、どこまでも荒野が広がるアメリカでは、その荒野や未舗装の道路が主な遊び場だった。
オーソドックスなネイキッドバイクでガタガタのガレ場を走れば、当然バイクにもダメージが発生する。そうした実体験から「前後サスペンションは長くしよう」「グリップではなく砂利や石を乗り越えられるブロックタイヤにしよう」「衝撃に耐えられるようハンドルバーを強化しよう」「地面に打ち付けないようマフラー位置を高くしよう」「エンジンを守るためのアンダーガードを作ろう」というアイディアが生まれた。それらが組み合わされたカスタムスタイルが「どこへでもよじ登れる」という意味の「スクランブル」を用いた「スクランブラー」と呼ばれるようになったのだ。現代のオフロードバイクは、このスクランブラーを原点に進化したもの。
ベースモデルのスクランブラーと見比べると、その特徴を羅列するだけでキャラクターの違いが如実に表れてくる。明らかに長くなった倒立フロントフォークとともに、チューブフレームには補強が加えられ、これによって後ろ側の高さも確保された。ホイールはリアこそ17インチのままだが、フロントは18インチから19インチへとサイズアップ。F 19 / R 17 というホイールサイズを聞いてピンと来た人は、かなりのバイク通だろう。そう、ムルティストラーダ1200エンデューロといった近年のアドベンチャーモデルと同じ仕様なのだ。
さらにオフロードバイクにふさわしいクロスバー付きのアルミニウム製ハンドルバー、完全ブロック型タイヤ ピレリ製スコーピオン・ラリーSTR、「フル・スロットル」にも採用されたステンレス製マフラー、ハイフロントフェンダー、「アーバン・エンデューロ」から受け継いだアンダーガードなどが備わり、完全オフロード仕様のスクランブラーがここに誕生した。ストリートバイクとして復活を遂げた現代版スクランブラーから派生したこのデザートスレッドは、改めてその原点に還ったモデルというわけだ。
エントリーというよりもワンランク上のグレードを目指した感があるデザートスレッド。その性能がいかほどのものか、実際に試乗してみた。
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