ドゥカティ ストリートファイター V4Sを試乗インプレ!ハイカロリーエンジンを配下とし得られる超快感
- 掲載日/2020年06月29日【試乗インプレッション】
- 取材・文・写真/小松 男
ライバルを一蹴する卓越した運動性能
何人たりとも寄せ付けない街の喧嘩屋見参
ストリートファイターとは、そもそもレーサーレプリカのカウルを取り去りバーハンドルを装着したカスタムを指す形容詞だった。そのムーブメントは90年代からはじまり、一部の間でストリートファイターカスタムとして根付いたのだ。ドゥカティはそのストリートファイターをラインアップモデルとして本気で開発することとなる。
初代ストリートファイターがお披露目されたのは、2008年のEICMA(ミラノショー)だ。ベースとなったのは、当時のフラッグシップスーパーバイクである1098。カウルを省いたことで、ドゥカティご自慢の屈強なL型エンジンや美しいトレリスフレームを露出しつつ、バーハンドル化されたことで、スーパーバイク譲りのハイパフォーマンスを街中で機敏に操ることが可能とされたそれは、まさしくストリートファイターという名が似合うものだった。それから12年。最新のストリートファイターはV4デスモセディチエンジンが与えられ、大きく進化を遂げた。
ストリートファイター V4Sの特徴
MotoGPマシン、デスモセディチGPを血族とし、
ストリートで振り回せるようファインチューニング
2008年11月、私はEICMAの開催前夜にドゥカティが行ったメディアカンファレンスに参加していた。翌日からのミラノショーで披露するニューモデルが次々と紹介され、その中の目玉となったのが、初代ストリートファイターだったのだ。余談として付け加えておくと、このイベント時に現在ドゥカティが使用している盾形のブランドエンブレムも発表されている。
ここでストリートファイターが誕生したのだが、それよりも少し歴史を遡り、現在も看板モデルの一翼を担うモンスターからの流れを書き記そう。初代モンスターは鬼才デザイナー、ミゲール・ガルーツィの手により1993年に登場した。当時のスーパーバイクである888系のフレームに空冷Lツインを搭載したドゥカティ初のネイキッドモデルだった。モンスターは登場するや否や爆発的なヒットモデルとなる。様々な排気量や限定バージョンなどバリエーションを広げてゆき、2001年には水冷の916系エンジンを搭載するS4が、そして2003年には片持ちスイングアーム996系エンジンを搭載するS4Rが登場する。
こうなるともはや空冷モンスターと水冷モンスターという別次元のモデルとなってしまっていったのだが、2007年に発表された新生モンスターM696からモンスターは空冷エンジンの道を歩み、その翌年にスーパーバイクのネイキッドバージョンとしてストリートファイターが登場したと言うのが、それまでの流れだ。ストリートファイターは後にミドルクラスの848を追加導入するが、その後モンスターに水冷エンジンモデルが復活してしまったこともあり、一線から退いていた。そして2019年のミラノショーにてMotoGPマシン直系のデスモセディチ・ストラダーレ・エンジンを搭載したブランニューモデルストリートファイターV4が発表され復活ののろしを上げたのだ。ここではサスペンションやホイールなどが変更された上級バージョンのストリートファイターV4Sをテストしてゆく。
ストリートファイター V4Sの試乗インプレッション
バツグンの破壊力を備えながらもフレンドリー
アンタッチャブルではなく、是非とも触れて楽しむこと
先に書いたように、初代モデルの発表の場にいた私にとって、ストリートファイターは思い入れのある一台だ。イタリアのバイク情報誌「Motociclismo」がEICMAと協力し集計して決める”世界で最も美しいバイク”にストリートファイターは選ばれ、それから11年経った昨年のEICMAでは新型ストリートファイターV4が選出されている。ストリートファイター=美しいバイクという図式に変わりはない。
初めて実車を目の前にしたストリートファイターV4Sは、パニガーレV4のテールデザインを踏襲しつつ、アニメキャラクターのジョーカーにインスピレーションを受けたというフロントマスクはコンパクトでシャープ、何よりもボディ両サイドに2枚ずつ設置されたウイングに目を奪われる。モータースポーツ界ではウイングの進化が顕著にみられるが、ストリートモデルへの装着はドゥカティが一歩先を行っていると言えよう。
テスト車両を扱うデポのスタッフからスイッチ類の操作の手ほどきを受けて、いよいよエンジンに火を入れる。最高出力208馬力を絞り出す1103ccデスモセディチ・ストラダーレ・エンジンは、Lツインではないもののドゥカティらしい歯切れの良いサウンドを奏でる。クラッチを繋ぎ発進すると、まず公称178kgという車重の軽さが際立って伝わってくる。交差点ひとつ曲がるにも風によって羽が舞うようにヒラリとパスすることができる。市街地を抜けてハイウェイに乗る。回転計には15000rpmまで目盛がふられているが、スーパースポーツモデルに慣れていないユーザーなら5000回転も使えばお腹いっぱいになるだろう。ただしそこから先に驚くべき加速を味わえる世界が待っている。がしかし、公道では自制心を持ちセーフティライドを心掛けなくてはならない。ここでポイントになるのは、ストリートファイターV4Sはガツガツとライダーをあおってくるキャラクターではなく、ペースを抑えたクルージングもできるということだ。超ハイカロリーエンジンでありながら、ゆったりと流すことも楽しめる懐の深さに、魅力を感じずにはいられなかった。
ワインディングは無敵とも言えるステージだ。軽い切り替えし、どこからも即座に加速するパワー、深々とバンクさせても恐怖を感じさせない。電子デバイスによる恩恵もあるが、そもそものバランスが良いのだ。これは良い、走らせているだけで幸せな気分になれる。電子制御式のオーリンズサスペンションが備わっているというのも大きいだろうが、何よりタイヤの性能も抜群によく、終始安全に、かつスポーティなライディングを楽しめるのだ。
実を言うと初代ストリートファイターは、なかなかタフなノリモノだった。それというのもシャシーが強固であるが故か、心地よいコーナーリングというものを得られにくく私を悩ませた。それに対してストリートファイターV4Sはどうだ。少し走らせるだけでもライディングを心底楽しめるもので、挙句の果てにはテスト車両を借用中、時間を見つけては近場であっても走らせたくなる始末だった。ストリートファイターV4Sはクルマで例えたら、数千万円はするようなスーパーカーのバイク版とも言えるようなパッケージなのだが、日常のアシとしても秀でたパフォーマンスを楽しむことができるフレンドリーなモデルになっている。これがスタンダードなら243万5000円、V4Sであっても279万9000円で購入できると言うのは破格だと思う(さらに2020年7月19日まで先行予約すると5万円分の純正アパレルクーポンがもらえるキャンペーンも開催中)。
ボルゴ・パニガーレにあるドゥカティの工場は新型コロナウイルスの影響で、一時閉鎖していたこともあり、生産が滞った時期もあったが、ストリートファイターV4とのバイクライフは非常に豊かなものとなることを保証する。なのでストリートファイターV4の購入を考えている方は、他に浮気せずじっと待っていて欲しい。
ストリートファイター V4Sの詳細写真
関連する記事
-
試乗インプレッション
ドゥカティ ストリートファイターS
-
試乗インプレッション
ドゥカティ ストリートファイター848
-
DUCATI購入ガイド
ストリートファイター/S
-
試乗インプレッション
ドゥカティの新型パニガーレV4Sを最速インプレッション
-
試乗インプレッション
すべてにおいて大きく進化した怪物、ドゥカティ新型モンスターを試乗インプレッション!