2011DUCATI 現行モデル一気乗り・ストリートファイター
- 掲載日/2011年11月27日【トピックス】
- 写真/Takao ISOBE、Takeshi YAMASHITA 文/Dan Komatsu
本記事は、 『DUCATI BIKES』 Vol.08 (2011年5月発行)にて掲載されたものです
STREET FIGHTERインプレッション
スーパーバイクモデルをベースにしたネイキッドモデルと思われがちだが、中身を覗いてみると、ほぼ新設計という拘りを持ったストリートファイター。その名に恥じない走りを見せることができるかどうかが肝となる。
レプリカ-カウル≒ストリートファイター
ずいぶんと以前からストリートファイターというジャンルは確立していた。イギリスでは90年代にストリートファイターという雑誌すら発刊されたメジャージャンルであり、ここ日本でいうと、2ストクオーターなどのレーサーレプリカをアップハンドルに変更して夜な夜なベイエリアあたりでエクストリームライドを練習するライダーが出没し始めたのが90年代後半のこと。それまでの峠などでヒザを擦っていた走り屋連中が、街に下りてきた格好だった。ヒザスリ走行はもちろん、ウイリーやジャックナイフからはじまり、ストッピーやバーンナウトなど、実際の速さもさることながら、バイクを上手に操り、ギャラリーに“魅せる”ライディングスキルへとスイッチしていった。このスタイルが世界各地で流行をみせ、走り屋はこぞってレプリカモデルをネイキッドスタイルにしていった。どこでも相手を見つけたら食って掛かる、そんなバイクの使い方が街の喧嘩屋とオーバーラップし、ストリートファイターと呼ばれるようになっていったのだ。
ドゥカティが、そのままストリートファイターという単刀直入なネーミングのバイクを発表したのが2008年のミラノショーでのこと、流行にのったというタイミングとはいえない。それまでストリートファイタージャンル的な位置づけとされていたスーパーバイク系水冷エンジンを搭載したモンスターシリーズがニューモンスターにシフトした時点でラインナップからはずれたことと、ドゥカティが考えるストリートファイターというジャンルを形にするためには少し時間が必要だったことが背景として挙げられるだろう。入念に計算され生み出されたストリートファイターは、一見すると純粋に WSBK レーサーレプリカである 1098 のネイキッドバージョンと見て取れる。しかしスタイリングこそ WSBK ネイキッドと見えるが、外装もシャシーもエンジンも新開発。実際に乗ってみると、まったくもって似て非なるバイクとなっているのだ。
近年のリリースされたドゥカティの中でも、特にアートワークに拘ったストリートファイター。挑戦的なスタイルは、まさに車両のキャラクターを良く表している。本国仕様では 155HP を発揮するエンジンは、日本仕様では馬力が抑えられているものの、乗り手に与えるインパクトは強烈そのもの。乗りこなす手強さはかなりのものだが、手なずければ最強の相棒となりうるマシンである。
ボローニャ流喧嘩屋スタイル
エンジンはテスタストレッタエヴォルツィオーネで、1098 の腰上と 1198 のクランクケースを組み合わせた形で組み上げられている。エンジンフィールは低速から太いトルクを感じさせつつ、高回転域でさらにひとのびする方向性とされている。スーパーバイクモデルとの決定的な違いは、ホイールベースが延長されていることだ。通常ストリートファイターモデルというと、ショートホイールベースにアップハンドルという組み合わせが定石なのだが、ドゥカティはあえて逆の手法を取ったのだ。ステアリングヘッドは低く構えたまま、フロントフォークを寝かせているうえに、スーパーバイクと同形状にみえるスイングアームも実は 30mm 延長している。この大きなアライメント変更により、ドゥカティストリートファイター特有のライディングフィールを備えている。
バーハンドルなのでクリップオンタイプに比べれば高い位置と言えよう。とはいえステアリングヘッドはスーパーバイクと同じく低い位置のままなので、やや肘を広げたまま車体に被さるようなポジションとなる。ホイールベースが長い上に前傾姿勢なので、地を這うような加速を全身で感じることが出来る。コーナリングは、ゆるい入力に対してはアンダーが出て立ち気味な反応を見せ、「俺はそんなに甘くないぞ」とライダーのやる気を煽ってくる感じ。そして積極的に攻めて走ると、これがまた楽しくなってくるのだ。テスタストレッタエヴォルツィオーネエンジンの怒涛の加速から思い切りの良いブレーキング、そのまま体重をしっかり預けリーン。手強さは徐々に操る快感となってライダーにフィードバックしてくる。今回試乗したストリートファイターSは、前後にオーリンズ製ショックユニット、そしてトラクションコントロールが装備されており、積極的なライディングを高次元で受け止めてくれた。他メーカーのストリートファイターモデルが、ちょこちょこと振り回すバタフライナイフ的な印象に対し、ドゥカティのストリートファイターは、拳自慢の生粋の喧嘩屋といったところだ。勝負を挑む際、このキャラクターの違いは大きい。
乗れば乗るほどに奥が深く、まさにドゥカティの血脈を感じさせてくれるストリートファイターだが、他メーカーのストリートファイターモデルと比べ、なによりも負けない点がある。それはデザインだ。細くエッジの効いたボディシェイプ、攻撃的な顔つき、低く右サイドにまとめられたサイレンサー、見られることを意識した剥き出しのエンジン。それはもう街中に止まっていれば、誰もが振り返るほどのインパクトがあるドゥカティなのだ。
まだストリートファイターオーナーになっていない人は、ストリートファイターの顔がミラーに映ったら気をつけたほうがいい。侮る無かれ、確実にアマちゃんは乗っていないはずだ。
詳細写真
ストリートファイターのエントリーモデル
オーリンズ製サスペンションやマルケジーニホイールなどのハイエンドパーツを装着するストリートファイターSに対して、ショーワ製フロントフォークと同リアサスペンション、10本スポークの軽量アルミホイールを装備するのが、通常ラインのストリートファイターである。
とはいえ、Sとの車重差は2kgとほんの僅か。また、Sでは装備されている DTC (ドゥカティ・トラクション・コントロール)は省かれているが、DDA (ドゥカティ・データ・アナライザー)の装着は可能な仕様となっているため、購入後のカスタムプランがある人や、気軽にストリートファイターの世界を覗いてみたい人は、このモデルから始めてみるのも悪くない。
STREET FIGHTER 編集部コメント
結構手ごわいぞ
ネイキッドではない。カウルを取り去ったスーパースポーツ。それを証明するのが強烈なスペックとデザイン。走らせてみればイメージそのままの手強さがライダーを襲う。ハイパワーなエンジンで速く走ろうとした結果がロードスポーツだったわけで、それをスペックはそのまま、アップハンドルにしたものだから、かつてないジャジャ馬になった。オレが乗りこなしてやる、と情熱を燃やす人でないと、ちょっと手に余る。(フリーライター 後藤 武)
二面性を持ったバイク
1,475mm という長いホイールベースと低回転でもトルクフルなエンジンによって安定した走行が可能であり、初心者でも気負わずに扱えるフレンドリーさを有している。コーナリング特性もバイク任せに走っている限りは何事も起きず従順な反応をみせる。しかし、積極的に操作を行い車体の動きを自身の支配下に置こうとするとキャラクターは豹変し、ライダーに高いスキルを求めてくる。この二面性を受け入れられるかが鍵となるだろう。(ドゥカティマスター 友野 龍二)
とにかく個性的
名前のとおり、まるで街中の暴れん坊。車体が軽快というか敏捷で、街中でも高速でもキビキビ走る。すごくダッシュが強力だからシグナル GP モードに入ったら敵無しの速さで駆け回る!?すばしっこいの何のったら…まるでじゃじゃ馬。わたしにとっては足着きがあまり良いほうではないけれど逆に一度走り出したら止まる暇を与えてくれないバイク。開け開けで走ると元気がいいので取り扱いは注意。ルックスもおしゃれだけど、性格も個性的。(フリーライター TOMO)
緊張感が心地良い
オートバイを擬人化して付き合ったりすることはあるけど、コイツは間違いなく男である。しかもマッチョでやや汗臭く、無口で腕っぷしの強い男だ。そんな屈強なヤツに対し「何とか付き合ってやろう」と思わせるところは 1198 と同じ。ドゥカティが培ってきたスポーツライディングのおもしろさがギュッと詰まってる。コイツに乗るときはライディングウェアにも気を配りたくなるし、背筋がシャンとするような緊張感をもたらしてくれる。(DUCATI BIKES 元編集部員 山下 剛)
美しい見た目と凶暴さ
「スゲーカッコいい!触ってもいいの?」というくらい、見るだけで感動させてくれたモデル、いや、大げさにアートと言いたいね。目を潤ませながら乗ってみるものの、押し出しの強さにまずびっくり。気合を込めて「曲がります!」って言わないと曲がってくれない…。ゴトー先生の「乗ること自体がストリートファイトなんだよ、コレは」という言葉に納得。胸ぐら掴まれて脇腹に膝を突き刺しても涼しい顔しているヤツ。完敗でーす。(VIRGIN DUCATI.com 編集部 田中 善介)
TOMOのタンデムインプレッション
1198 と比較するとステップ位置が低く、膝の角度が緩くなるぶん踏ん張りやすい。それでも身体をホールドできるとまでは言えないかなあ。シートはほぼ同じ形状で、股のあいだからグラブベルトを掴むとロデオのようなイメージ。重心もアイポイントも高いから、慣れるまでは少し怖いかもね。落ちないように気をつけて。
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